第37話 体と心

――――――もう一度事務所に戻った。


「結月!!」

「?……」


椅子ごと結月がこっちを向いた。


「結月」

「なに?」

「お前まだ紙書いてねーだろーな。」

「取りに行く元気ない」

「色々聞いたから?」

「別に驚かない。」

「別れるか?」

「……涼太は?後悔しないの?」


「するよ。」

「即答?」

「うん。後悔しないはずがない。でもお前に背負わせたくない。」


結月の目が一気に変わって思い切り頬を叩かれた。


「いつまでカッコつけてんの。なんで、希咲に言えてあたしに言えないわけ?いつまであたしを子供扱いするわけ?いい加減にして!高校卒業して初めてしたよね?クリスマスもしたよね?痛いのもしてくれたよね?あれはなんだったの?大人になったからじゃないの?!」


「……何お前…。殺されたいの?」


僕は…頭が真っ白になってまた片手で結月の首を絞めていた。


結月は苦しいはずなのに微笑んで、僕の手に結月の手を添えた。


僕は我に返って手を離して抱き締めた。


「……ごめん」

「……いいの。言葉にできないならこれでいい。伝わったから。」


「どこも行かないで。結月。」

「わかってる。どこも行かないよ。」


まだ少し苦しそうな声でそう答えた。


「ごめん。」

「涼太がそうなるのは図星だから。だから伝わる。」

「本当に殺しちゃうかもしれない。」


僕が弱々しく言うと、


「それならそれでいいよ。私は嬉しいから」

「……?嬉しい?」

「私は涼太にそう教わった。」

「教わった?」


結月は僕の手を取ってまた首に当てた。


「涼太はね、言葉にできないときこうするの。こうして私に溢れてくる言葉にできない思いを伝えるの…。涼太の苦しみを伝えてくれるの。…苦しいよ?苦しくないって言ったら嘘になる。でもね?でもだよ?……そんなあなたが愛しいの。可愛いの。あたしの方が年下なのにあなたが可愛い。だってその後いっぱいしてくれるでしょ?それが嬉しい。優しいのも苦しいのも、全部吐き出してくれるしぶつけてくれる。私、幸せだよ?」


「そんなふうに思ってたの?」

「そうだよ。」


「……。」


僕は優しく結月を抱き寄せて頭を撫でた。


「子供扱いしないで。」

「してない。本当に可愛い。俺だけの人。…ここじゃ痛いから下行こう?」

「いっぱいしてくれる?」

「頭真っ白になるまでやりたい」

「いいよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る