第34話 別れ

ある日の夜中、泥酔して希咲に電話をかけた。


(通話中)


「……。」

「どうしたの?」

「吐きそ…」

「はぁ?なにやってんの」

「飲みすぎた」

「誰かと飲んでたの?」

「一人で飲んでた」

「いまどこ?」

「わかんね…」

「位置情報LINEでちょうだい」

「…わかった。」

「切らないで」

「なんで」

「切らないで」

「わかったよ。うるせーな。叫ぶな。頭痛てーんだから。」

「叫んでないから。…帰んないの?」

「帰んない。」

「なんで?」

「会わせる顔ない。」

「なんかした?」

「なんも。もういい。」


―――僕は一方的にかけて一方的に切った。



でも、位置情報だけ送った。


何分くらい経ったのかわからないけど、希咲が来た。


「帰るよ」

「やだ」

「はぁ?なんで。」


僕の前にしゃがむ希咲を抱き寄せた。


「…来てくれてありがとう。」

「……来るに決まってるでしょ。」


「……あたしから言うのもあれだけど、

結月と別れたら?」


相当な覚悟があったと思う。でも僕にあえて言ってきた。


「……そうだな。」





―――――――――翌月。



希咲が突然店を辞めた。


僕が不在の時に辞表だけ置いていったとの事。


結月には追うことを止められた。


「でもさ、あいついないと!!」

「いないとなに?今はもうあたし、ずっと居るよね?」

「……。」


僕は目の前でスマホを取ってすぐに電話をかけた。



(通話中)



「お前今どこにいんのよ?!なにやってんのよ?!ふざけんなよ!!」

「……じゃあ結月と別れて。もう無理。耐えられない。」


「結月、別れよ。店も辞める。」

「本気で言ってんの?」

「本気。」


「お前今どこにいんの。すぐ行く。」

「家。」



「行くの?」

「行く。」

「あたし、結局、希咲に勝てなかったの?やっと結婚できたのに?……わかった。別れてあげる。言い寄ってきてる男も居ないわけじゃないし。つなぎならいくらでも作れる。」


僕はまた結月に鎌をかけられた。


「……ふざけんな。」

「なに?」

「ふざけんな……。」



僕は結月の首を掴んだ。


「てめぇ殺すぞ。」

「どうぞ。あんたに殺されたら本望。」


「……クソが。」




僕は希咲に電話をかけた。


「悪い。行けない。ごめん。」

「いいよ。わかってるから。」


僕はずっと結月の首に手をかけていた。

そして電話を切って、少しづつ圧をかけた。


「……俺から逃げるなんて出来ると思うな。」


僕は乱暴にもそのまま引き寄せて口付けた。

そのまま首にかけた手を離して頭を支えた。


「……逃げないよ。全部嘘。」

「そうだよな。お前は死ぬまで俺のものなんだよ。」

「そうだよ。私はずっと涼ちゃんのもの。」

「…店閉めてくる」


「いい。帰ってからゆっくりしよ。」

「わかった。」




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