第33話 サプライズピアス

あれから2ヶ月が経って少しまた店が落ち着いてきた頃、店でレクレーション大会をした。


みんなでアミューズメントパークに行って各々やりたい事をやった。


僕と結月と希咲と瑠花は一緒に遊んでて、パートさん達2人はカフェでお茶してた。


「あ、財布忘れたから車行ってくる。」と言って、

結月と瑠花を残して希咲を連れて車に戻った。



車に戻るとその影で僕は希咲の顎を掴んで強引に口付けた。


「さすがにここは嫌。」

「ここではしないから安心しろ。」

「ほんとに?やりかねないから嫌。」


と希咲が微笑む。


「お前にこれあげたくて」


と、ポケットから出した小さな袋を渡した。


「え。なにこれ。」

「開けて?」

「いいの?…あ、ピアス。可愛い。」

「なんか変なスイッチ入っちゃって。ぶっ刺してやりたくなった。」

「こっちならいいかな。」

「でしょ?」


僕はもう一度希咲にキスした。


「…希咲。国外逃亡でもするか。」

「結月は?」

「…連れてくか」

「意味無いじゃん。」


「後で刺して。」

「いいよ。」

「財布は?」

「あ、忘れてた。」

「危ない。」


―――――――――――――――。

その後、2人の所へ戻ってローラースケートをやるかやらないかになって、僕と希咲でやる事にした。



「希咲!希咲!止まんない!助けて!」


僕がゆっくりなのにあわてふためいていると、

僕の前に笑いながらスムーズに来て抱き寄せてくれた。


「本当に運動神経ないんだね。」

「怖い…。」

「あっはっはっ!」

「希咲ひどい。」

「可愛いねー。ほら行こう。おいで。ゆっくりでいいから」

と僕の手を引いてくれた。



それを見て、瑠花が結月と話してた。


「希咲さん達仲良いですね」

「そうね。」

「たまに、希咲が奥さんなんじゃないかって思う時があります。」

「どんな時?」

「…結月さんが居ないときですね。店長、暗い顔してて、大体希咲さんがそういう時に、下に居るから、なんかあったら声掛けてって居なくなるんです。その後暫くして、目を真っ赤にした店長と希咲さんが上がってくるの見かけたりします。」


「ごめんね。心配かけて。」

「いえ、私はいいんです。でもたまに、結月さんが可哀想だなっ思って。奥さんなのに希咲さんの方が密というか。仲が良く見えてて。」


「…そうね。希咲はね、あたしの代わりなの。まだ瑠花ちゃんにはわからないかもね。」

「どういう事ですか?」

「うん?希咲はあたしの代わり。あたしにしたい事を希咲にするの。でも本当に涼太あいつがヤバい時は希咲でもダメ。あたしじゃないと手が付けられない。あいつ、バカだからさ。あたしの事まだまだ子供扱いしてんだよね。言いたいこと言わないし、したい事しないし。でもね、希咲に吐き出せてるからそれはそれでいいかなとも思うんだよね。難しいよね。でもあたしは希咲の代わりになれない。希咲にしか出来ないこともあるから。」


「不思議です。3人の関係が。」


「長いからねあたし達も。あいつには両方いないとダメだから。だから極力一緒に休まないようしてるんだよね。たまにはあるよ?月2回くらいかな。でも、その日はあいつ帰ってこないんだよね。」

「確かに。いつもどちらかはいますよね。…どこにいるんですか?…希咲さんのとこ?」

「だいたい店にいる。下に居るか、事務所で寝てる。」

「なんでですか?新婚なんだから帰りたいんじゃないですか?」

「普通はね?でもあいつバカだからさ。あたしに苦しんでる顔見られたくないって。」

「遠慮してるんですかね。」

「しなくていいのにね。夫婦になったんだから。」

「だからじゃないですか?うちの父親はどこで何してるか分からないんですけど、たまにうちに帰ってきても仲良いフリしてますよ。お母さんの愚痴をずっと聞いてます。」

「そういうものだよね。きっと。優しくしたいんだよ。きっと。」

「外に女の人居るのバレバレなんですけどね。」


「…あたしも嫌だよ。嫌だけどあたしがどうにも出来ないところを支えてくれてるから文句言えないんだよね」

「なんで結婚したんですか?やめてくれるって思ったんですか?」

「私が一番になりたかったから。ただそれだけ。でも結局ね〜。あいつとっては同率一位。多分そう。少しあたしが上くらい。」

「悲しくないですか?」

「一番悲しいのは希咲だよ。」

「…まぁそうですよね。」

「悪い人ですね。そう考えると。」


「…その言い方はやめて欲しいかな。ひどい奴だけど、あたしと希咲にとっては本当に大事な人だから。」

「…ごめんなさい。」

「いいよ。事実だから。でも私はあいつを嫌いになれない。クソみたいなやつだけどね。」


結月は笑っていた。



―――その頃僕はローラースケートを終えて、結月にまっしぐらだった。



「結月ー!!」

僕はバカみたいに手を振りながら希咲と歩いてた。


「ね。ばかでしょ?でも恨めない。」

「結月さんしか見てないみたいに見える。」

「そう。ほんとはそうなの。」



「ゆづ、楽しかった!」

「うん。楽しそうだったね。」

「あっちいこ。ちょっと結月借りるね」



僕はボールプールの影に結月を連れ込んでキスした。


「なにあれ。ムカつくんだけど。イチャイチャしすぎ。」

「楽しかった。」


結月から僕にキスした。


「あたしのなんですけど。」

「そうだよ。でも、希咲にも楽しんで欲しかった。」

「わかってる。だから許してんの。」

「可哀想だからじゃないよ。俺も楽しかった。」

「私は涼太にとって一番?それとも一緒?」

「……少しだけ上。」

「どうしたらあたしだけ見てくれる?」

「遠慮しなくていい。真っ直ぐに来てくれればいい。」


「……」


結月はまた僕にキスした。


「私の涼ちゃんなの。」

「そうだよ。」

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