第32話 セカンドパートナー
小さい事だけど、元旦に結月と籍を入れて、
結月の髪型が変わった。今まで2つに結んでたものを後ろでカチューシャでまとめ始めた。
『大人になったなぁ…』なんて思ってた。
でもまたこれも病気みたいなもの。
僕以外の男に結月の首筋を見られる事に苛立ちを感じるようになった。
それに気付いたのは希咲。
「涼くん。」
事務所で仕事してると隣に座って話しかけてきた。
「ん?」
「どうでもいい事なんだけど。」
「どした?」
「結月に隠し事してない?」
「いっぱいあるよ?」
「…それもそれでどうかと思うけど。」
呆れた顔をしながら話を続けた。
「結月、髪型変え始めたの今年入ってからだよね?」
「うん。…何が言いたい?」
「何が言いたいかわかってる感じだね。」
「…俺、
「知ってる。…大丈夫?」
「俺以外の男の目線がイラつく。てかもう、あいつを見る目がみんなあいつにそういう目で見てんじゃねーかって思う。『可愛い』って思った時点で殺したくなる。てかお前もな。」
「…?あたしも嫌なの?」
「違う。お前に対しての目も俺は嫌。」
「そんなに好き?」
希咲が髪を耳にかけてそう聞く。
「やめろ。下連れてくぞ。」
「よろこんで?」
「…ピアス欲しい?」
「ピアス?」
「うん。それ、俺があげたやつ?」
「そうだよ。ここ数年、涼くん以外居ないから。」
「ならいいや」
「ピアスくれるなら欲しい。」
「……こんな事結月に言えないからさ。」
「あたしに買うか買わないか?」
「それもそうだけど、」
「なに?」
「……」
僕は無言で希咲の耳を指で優しく包んで親指でピアスを撫でた。
「…したくなる。」
希咲が艶めかしい目をする。
「いいよ?」
「…今度お前のこの耳にピアス刺してやりたい。」
「穴開けてみたい?」
「出しながら開けてみたい。」
「何発出せるかな?」
「いいね。そのゲーム。……可愛いなお前は。」
僕は誰も居ないことを確認して、希咲にキスした。
「ねぇ、私を一番にしてよ。」
「うーん。結月へのこの異質な性癖にお前は耐えられるか?お前に対してもそうだけど。」
「私は嬉しいよ。」
「いつか結月を嫌いになったらな。」
「いつ?」
「わかんない。」
「涼ちゃん」
「うん?」
そんなこんな話してると結月が来た。
「なんで耳触ってんの」
「耳痛てーって言うから。」
「最近穴開けたの?」
「開けてないんだけど、しばらくつけてなかったから閉じかけてんのかも。」
「無きにしも非ずだね。」
僕は結月といる時も希咲の目はことある事に見てる。というか、仕事中も大体見てる。
希咲からも感じる。セカンドパートナーとしては一番いいのかもしれない。
―――――――――。
3月に入って、入卒園や、就職などでまた大きく流れが出来てきた頃、また僕が詰まり始めた。
僕も普段から表には出るのだが、業務が多忙になるにつれ、疲弊がメンタルに来はじめていた。
タバコはかなり少なったけど、捌け口を作れるほど器用では無くて、体調不良にも見舞われていた。
結月はというと、週5で店にいてくれるようになった。だいぶ助かってるが居ないとしんどい。
でも最近思うのは…。『希咲』
最近、忙しくて希咲と話せなくなっていた。
目は見るが、時間が無い。
僕はある日の仕事終わり、希咲と話あるから先帰っててと結月に伝えた。
「希咲、この後ちょっと話したい。疲れてるだろうし、予定あるならいいよ。」というと、
「私も話したい事ある」と。
「じゃあ先帰ってるね」と結月が帰ったのを見届けて、話し始めた。
「…俺は後でいい。希咲は?」
聞くのと同時に希咲にキスされた。
「やっぱり無理。あたしが涼くんと話せないと辛い。なんでもいい。話して。」
「俺も。希咲と話したかった。こんなに近くにいるのに話せなくて、疲れてるかなって思って…。希咲じゃないと言えない事もいっぱいあるのに…。」
「泣くほど寂しかったの?」
僕が静かに頷くと、希咲が椅子に座る僕を包み込んだ。
「涼くん。わたし2番目でいい。結月に勝てないのはわかってるから。どこにも行かないからこの位置で居させて。」
「希咲…」
「いい?」
「うん。」
「話したい。ぎゅってしてほしい。」
「やっぱり。そうじゃないかなって思ってたよ。」
「ごめん」
「いいの。私もこうしたかったから。」
僕も下から希咲を包み込んだ。
希咲にしか出せない自分がいる。希咲にしか吐けない事がある。
僕には結月も希咲も必要…。
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