第30話 本妻

真凜と別れて、またビデオボックスに戻った。


(通話中)


「どうしたぁ?」

「真凜、またしよ。」

「そうね。またしようね。」

「たのしかった」

「私も。」



――――――――――――。

(通話中)


「いまどこ?」

「生きてはいる。迷惑かけてごめん」

「店はいいよ。みんな居てくれるから。でも心配してるよ」

「結月は怒ってる」

「あたしは、最初から心配してる。今だってそう。でも、あのまま店にいてもみんなに心配させちゃうだけだからほっといてた。そのうち寂しくなってこうやってかけてくるのわかってるから。」


「結月、別れよ」

「理由は?」

「これ以上迷惑かけたくない。みんなの何ヶ月分かの給料なら口座にあるし、お前への慰謝料も家の引き出しに通帳入ってるから全部持ってけ。暗証番号はお前の誕生日だから。」


「本気で言ってんの?」

「うん。」

「認めない。『あぁそうですか』って言えるほどあたしは涼ちゃんの事嫌いじゃない。むしろ毎日好き。涼ちゃんもでしょ?」

「……」


「涼ちゃん、あたしが重い?」

「お前のためだから」

「あたしのためだと思うなら本当の涼ちゃんで居て。寂しかったんでしょ?だから耐えられなくなったんでしょ?なんで言わないの?なんで溜めちゃうの?カッコ悪くないから。むしろあたしは言って欲しい。困りたい。涼ちゃんに甘えて欲しい。」


「帰る」

「待ってるよ」

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