第22話 闇の中

――――――10月末。

ハロウィンを控えて、Xmasの計画も公私共に頭の中で描いていた。


店の事はみんながいてくれるから上手くいってる。でも、プライベートな部分では不安のなかにいた。…というより多分ここまで来ると病んでると思う。でもそれはそれで辛くてしんどかった。




―――ある日の夕方、喫煙所。


煙を吐いて空を見上げた。

僕と同じように少し暗かった。


ぼーっと椅子に座って空を眺めてると、

真凜が来た。実は真凜。ここに来てからタバコが再発した。僕を見てだそう。


「…なぁ真凜。どうでもいいこと聞いて」

「どしたぁー?」

「……殴んないでよ」

「ふっ、なに。」


少し吹き出して答えた。


「…真凜としたいなって。」

「……どういう風の吹き回し?」


「話的に嫌ならぶった斬っていいから。」

「どうぞ?」

「…やっぱいいや。」


僕が立ち上がって店に戻ろうとするとまたあの時のように奥襟を摘まれた。


「歩けません。」

「逃げんな馬鹿。ちゃんと言え。言える相手なんだから。こっちは真面目に聞こうとしてんだよ。逃げんな。」


僕は…僕より少し背の高い真凜を抱き寄せた。


「不安なんだよね…何回も何回も『誰ともしてない?』って。『俺だけ?』って確認しないと。でもそのうちあいつに怒られて『私も不安』って。俺が『誰とでもするから』って。」


「あんたはね…そういうとこ病的だからね。」

「……」


「大丈夫。よく言えたね。えらかったよ。そうね…それが涼太の性格だからねぇ。どうにもなんないよね。でもね…だからと言って結月あのこに出していい部分と、出しちゃ行けない部分もあるからね…。難しいよね…。」


真凜は僕を包み返して、頭を撫でてくれた。


「だから…真凜としてみたい。安心出来る相手が欲しい。」

「結月ちゃんと別れてからね。その後なら相手してあげてもいいよ。」

「……無理。」

「なんで無理なの?」


「結月が…結月が死ぬほど好きだから。あいつだけがいい。あいつにわかって欲しい!!…でも無理だから…だからしんどい…。」


真凜には出勤してくる結月が見えていた。

真凜は目で、『事務所に行って』と目で流した。



――――――真凜に落ち着かせてもらって事務所に戻った。


「おはよ。」

「おはよ。…やべ。鼻が。」


僕がティッシュで鼻をかむと、

結月が僕に後ろから抱きついてきた。


「…涼ちゃん。あたしも、涼ちゃんが大好きだよ。」

「うん。」

「話して欲しいな。ちゃんと。」

「怖い。」

「何が怖い?」

「……嫌われたくない。」

「嫌わないよ」

「悩ませたくない。」

「一緒に悩もうよ。涼ちゃんだってあたしが話すと一緒に悩んでくれるでしょ?一緒に解決しようとしてくれる。だからあたしも同じ事したいんだよ?」


「わかった。夜話す。寝る前に。」

「…わかった。約束ね」

「うん。」



――――――――――――。


帰宅後、就寝前。


「涼ちゃん。聞かせて?」


ベッドの中で結月がいつもの様に可愛い顔して聞いてきた。


「俺、びょーきかも。」

「…やりすぎ?」

「…ちげーから。」


結月が少し笑う。


「あー…もうダメ。可愛すぎる。」


僕は結月を上から見下ろした。


「…。」

「なに?」


「お前が死ぬほど好き。いや、もう死んでもいい。……誰にも触れさせたくない。」


僕は結月の上に乗って、首に手をかけた。


「止まんなくなったら殴っていいから。無理やりでも止めて。…殺したくないから。」


僕は少しづつ首に圧をかけた。


「そう…この顔が好き。お前の苦しんでる顔が好き…。俺だけのお前だよ。…ずっと俺だけのだよ。」


僕は手をゆるめて唇を重ねた。

そしてそのまま首に唇を這わせて歯を立てた。


結月が吐息を漏らす…。


「なぁ…耐えられるか?」


僕が耳元で囁くと、


「大丈夫」と答える。


僕は頬を叩いた。


「…答え方。違うよな。」

「ごめんなさい…。」

「違う。謝って欲しくない。耐えられんの?耐えられないの?…それともやめて欲しい?分かるまで痛めつけるけど。どうする?」


「…教えて?どう答えたらいい?」

「…そうだな。俺なら…俺が結月にこうされたら、『幸せです』って答える。でも結月には結月の感じ方があって言葉がある。でも、『大丈夫』は認めない。」


僕は…また少しづつ首に圧をかけた。


「どうなの?…俺はこういうやり方でしか表現出来ない。ただ甘やかして濡らして入れて、出すだけじゃつまんねーんだよ。満たされない。不安なんだよ。お前が大学行ってる間に誰かに手出されてんじゃねーかって。誰かとどっか行ってんじゃねーかって。全部お前の自由だよ?けど、俺はそう思うの。不安で死にそうになる。不安で殺したくなる。」


結月は一瞬微笑んだ。


僕は手を離して寝室からで出た。


寝室から出てベランダに出てタバコに火をつけると、結月が来た。

僕を後ろから抱きしめると話し出した。


「私、決めた。涼ちゃんの全部受け止める。」

「無理しなくていい。壊したくないから」

「大丈夫。…ごめん。」

「言い直して。」

「壊れないから。捨てないで。」

「それは俺のセリフ。ずっとそばに居ろよ。…でも自分のやりたい事はやれ。それでいいから。」

「ありがとう。」





―――――――――真夜中。



(通話中)


「結局、やんなかったけど言いたいことは言えた。」

「一歩前進?」

「うん。だと思う。」

「なんか物足りなさそう。」

「どっかいねーかな。思い切りやらせてくれるやつ。どうせなら壊す所まで壊したい。俺なしじゃ生きれ無くなるまで病ませたい。」


「試してみる?」

「殺したくない。」

「思う存分やってみたら?何か見えるかも」

「覚悟も無いくせに。」

「死ぬ覚悟?」

「そう。」

「あんたに殺されるなら本望かな。」

「なんでそこまで言える?」


「あたしに覚悟があるから。言っとくけど、あたし、あんたと一緒になりたくて全部捨てたんだからね。覚悟なかったらあの店やめてあんたのそばにいないから。」


「……やるか。」

「好きなようにやってみて。」

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