第20話 汚れない子が好き
――――――1ヶ月後。真凜と2人きりの時間がたまたまできた。
「涼太。」
「うん?」
「あたしどうする?居てもいいの?」
真凜が僕にそう聞いてきた。
「居てよ。」
僕は咄嗟に真凜の手を握った。
細かった。…そういえば初めてだった。手に触れた事も、頬に触れたことも一度も無かった。
《優良な客と店の女の子》その関係性のまま今まで来てた。
「ごめん。つい。」
「別にいい。居ていいの?」
「しんどいなら仕方ないけど。」
「違う。」
「ん?」
「あたしがここに来た理由わかる?」
「俺を助けに来てくれた。」
「そう。でもね、それだけじゃなかったの。」
「……結婚準備期間?」
「はい?ばかなの?」
「いや、そういうのかなって。」
「いいや。ちょっと来て。」
僕は真凜に引き寄せられてキスされた。
「これでわかんないなら次どうする?」
唇が触れるか触れないかの距離でそう聞かれて僕は…。
「俺ね、、、結月以外無理みたい。」
「なんで?」
「結月はね、俺だけなんだ。その…Hしたの。だからその…俺だけなんだ。だから。それ以外の人とはもう出来ない。なんていうか、いくらお風呂入ってても、頭洗ってても、想像しちゃうんだ…。俺が触れてるこの場所もきっと誰かに触れられてるんだろうなって…。誰かの跡が見えないけどあるんだろうなって。体中にキスされてんだろうなって…。それで萎える…。悲しくなる…。だから俺、今まで真凜と何もしてこなかった。結月と会う前から真凜とは知り合ってるけど何もしなかった。」
「潔癖?」
「とはまた違う。多分、性癖。結月はその、なんて言ったらいいかな。『綺麗。』『汚れてない。』俺だけにしか触られてないから。強いて言うならお父さんくらい?小さい時とかに。だからその…大人がダメ。」
「なるほどね…。あんたそれ、いつまでもつの?ていうか、そのあんたの面倒臭い性格って性癖にもなってると思うけど、全部出せてる?」
「……言えない。」
「嫌われたくないから?」
「そう。」
「どんな感じなの?」
「SとM両方ある。振り幅がかなり多い。」
「キレたらSって感じか。」
「そう。殴ってそのまま犯したくなる。」
「結月ちゃんには?」
「軽いのを一回だけ。」
「泣かれたでしょ?」
「『嬉しい』とは言いつつあれは本音じゃない。」
「困ったもんだねあんたも。」
「……」
僕は真凜の明るめのサラサラな髪に触れた。
「ん?」
「サラサラ。」
「トリートメントしてるからね。」
「今まで触ったことないから」
「そうだね。一切ね。」
「……トリートメントとか、パックとか売ったら売れるかな?」
「いいんじゃない?コンビニでもパックはある時代だしね。」
「やってみるかな。」
「楽しそうね。」
「楽しいよ?」
不思議だった。僕は真凜の言葉と雰囲気に包まれていた。
「ねぇ、真凜。」
「うん?なに?」
「いつかさ、一緒になろうよ。」
「そうね。いつかね。一緒に居れたら楽しそうね。」
「……多分なんだけど、真凜とは普通にHが出来そう」
「なんで?」
「『普通』 は言い過ぎかもしれないけど、受け入れてくれるならめちゃくちゃぶつけられそう。」
「…そうね。
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