第19話 近い未来

結月が喫煙所に来ると、既に僕の隣に希咲が居た。


「そっか。で?結月に謝ったの?」

「まだ。」

「早く謝りなよ。」

「…だってさ」

「なに?」

「なんかもうよくわかんない。」

「なにが?」

「すっげー今結月としたい。」

「あー。スイッチ入っちゃったんだ。」

「止めてよ。」

「どうやって?」

「んー。」

「思いっきりつねってあげよっか?」

「ダメ。余計に興奮する。」

「そうだった。」


希咲は苦笑いしていた。


結月はそこまで聞いてもう1つの椅子に座った。


僕は直ぐに謝った。

「結月、ごめん。叩いてごめん。」

「もういいよ。痛かったけど。」

「本当にごめん。」

「私もごめん。荒くなっちゃった。」

「いや、それは嬉しかった。なんか、うん。結月にマジでキレられて嬉しかった。」


「どっちの意味で?」

希咲が割り込んできた。


「…わかんない。多分どっちも。だから逃げて来たんだよね。頭おかしくなりそうだったから。」

「まぁね…相手結月だしね。ただのDVになりかねないしね。」

「希咲ならね、口も手も出てくるから互角なんだけど。」

「結月はダメ。もうやんないでよ。」

「うん…。」

「衝動的?」

「そう…。一番ダメなやつ。」

「してる時は?」

「『首』?…あれは両方。衝動もあるし、冷静もある。けどさっきのは完全に衝動。真凜居たから助かったけど居なかったらまだやってたと思う。」


「困った男だね。」


結月はずっと何かを考えてた。


「ねぇ、涼ちゃん。」

「うん?」

「今回は許す。でも次したら許さない。だから衝動なら違う方法で出して。できる?」


希咲は冷静に聞いていた。


「……」

僕が返事出来ないでいると、


「涼くん?答えて。」

「わかりました。」


僕は、こういう時の希咲には逆らえない。


「……どうしよ。本当に2人いなくなっちゃったら。」

「そのための真凜さんでしょ?」


希咲がそう言う。


「……真凜は頭。頭脳。でも物理的?に2人居ないと寂しい。」

「人形でも置いとけば?あたしと結月の。」


すると結月が吹き出して笑い始めた。


「涼ちゃんがその2つの人形に話しかけるの?想像したら面白すぎる。」

「だって、そうでもしないと持たないよ?真凜さんも大変だって。仕事もして、この人の世話もして。」


希咲は、結月を見て微笑んでいた。

2人の間にも強い絆が出来ているようだった。

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