第17話 結月の代わり

「えっと…今日からうちで働く事になりました、 『門田かどた 真凜まりん』さんです。宜しくお願いします。」


僕がみんなに頭を下げると、その後ろから真凜が頭を下げた。


「真凜さんは今年で、さ…」

「歳、必要?」

「え?要らない?」

「要らないでしょ。察して。」

「いくつに見えますか?」

僕がみんなに聞くと、


「当てられても嫌なんだけど」と突っ込まれる。

「ということです。ご趣味は、、」

「お見合いするわけじゃないんだからさ。」


「どーすんのよこういう時。もうわかんね。みんな学生だったからそれなりで良かったけどお前に『どこどこ高校の』なんて言えないじゃん。」と笑うと、


「あーもう。黙ってて。…すみません。失礼致しました。私、『門田 真凜』といいます。先週までラウンジで働いてました。3年ほど働いてお昼に仕事したいと思ってやめてきました。そんな時にこの人から誘われてここで働く事にしました。宜しくお願いします。」

「宜しくお願いします。」



皆には1人ずつ新しい人が入ると伝えていたので特に驚きも問題もなかった。

結月にも真凜と話した日にそのまま話した。

でも真の目的は話してなかった。




――――――。


「真凜、こないだ話してた、お前にここにいて欲しいって理由なんだけど。」

「うん。」

「結月いるじゃん?あいつの事。」

「あの子がなに。」

「俺のせいで短大辞めるって言うわけよ。その…俺、人と話すの苦手じゃん?発音悪いし滑舌悪いし話し終わったら疲れるんだよ。結月とか、希咲とか、真凜ならいいよ?もう長いし分かってくれるしさ。でも他はそうじゃないじゃん。だからそのね、疲れたあとにあいつに気遣いさせちゃうんだよね。気疲れかな。でもあいつ居ないと一呼吸置けないというか、あいつがいてくれるからまともで居られるんだよ。あいつが居ないと息抜けなくてさ。そんな事話したらあいつ、『短大やめる』って。だから、あいつが辞めなくていい方法って、真凜がここにいてくれる事だなって。」


「希咲って子は?あの子でも良くない?」

「確かに結月の次にお気に入りではあるけど…」

「本当にやらしい。」

「?」

「『大人の女』が言いわけだ。」

三十路みそじめ。」

「うるさい。あんたもでしょ。歳同じじゃん。」

「そだよ?」

「……で?あたしに結月ちゃんの代わりをしろと?」

「座ってるだけでいい。今だって俺…安心してる。だから…居て欲しい。あいつと、俺のために…。」

「わかった。」

「ありがとう。」

「……でも結月ちゃん賢そうだよね。二十歳には見えないわ。」

「あーうん。多分、結月も希咲もあんな顔して中におばさん入ってるから。俺居ないとこで脱いでんじゃねーかなって思う。背中にチャックとかついてんだよあれきっと。」


「それくらいあの子たちしっかりしてるよね」

「そうなんだよね」

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