第11話 ポンコツ店長なんで

間宮は出会った頃の結月の様な感覚だった。

でも一線を超える気は全くなかった。


でもそんなある日、店で勤務中に花瓶を割ってしまった。別に気にしてない。いずれ壊れるし、怪我さえなければいいから。


けれども、間宮の母親がでてきた。


――――――――――――。


「娘を辞めさせてもらってもいいでしょうか?弁償はさせますので。この子はなんにもできない子なんです。人様に迷惑をかけることしか出来ない。なのでご迷惑ですよね。お世話になっていては。」


僕の手は震えていた。

すると、隣に居た結月が僕の背中に少し触れて言った。


「いいよ。あたし言うから。」と。



「お母さん。お帰りください。瑠花ちゃんは置いてってください。お母さんだけお引き取りください。お母さんからはそのようにしか見えなくても私達からしたら可愛い子です。仕事が出来るか出来ないかなんで正直どうでもいいんです。大事なのは、瑠花ちゃんがのびのびと楽しみながら働ける事。お金を稼ぐことです。その中にお母さんは必要ありません。それに今瑠花ちゃんは働く事を学んでる時期です。だから失敗してもいい。失敗したら一緒に考えてあげればいい。私はそういう考えの前オーナーと、ここにいる店長の元で育ちました。なので、ご心配には及びません。瑠花ちゃんが『嫌だ』と言うまでお預かりしますので。そのつもりでお願いします。」


そこまで結月が冷静に話すと

間宮の母は静かに頭を下げて帰って行った。


――――――――――――。


「ゆづ、ありがと。」

「ありがとうございます。」


こんな小さな店なのに結月はこんなふうに考えていてくれた。僕はそれが本当に嬉しかった。


結月に背を向けて涙を拭いてると、後ろから包み込んでくれた。


「涼ちゃんのおかげだよ。あたしも、希咲も、瑠花ちゃんだって。ここにいれる。」

「俺がなんも出来ないから。」

「そうね。だからみんないるんだよ。…瑠花ちゃん、安心してここに居て。大丈夫だから。」


結月は優しく瑠花を包み込んだ。


ちょっと異質な親子感を結月も感じてたようだった。

でもうちの店はみんなで助け合って盛り上げていく。それが、うちの店のやり方。

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