第2話 重ね合う

木枯らしの吹く秋の日。

僕は結月に少し言われた。


「涼ちゃんさぁ、宮田さん達とちゃんと話してる?」

「いや、だって男性社員あいつ話してくれてるし。」

「あんたの店でしょ。」

「そうだけど。」

「なんかあるじゃん。『寒いですねー』とか、『晴れてますねー』とかさ。」

「苦手」

「話せ。」


結月が可愛い顔で少し怒って見せた。


「しゃーねーな。」


僕は人と話すのがすこぶる苦手。なぜか結月は僕のそんな重い扉を魔法のように開けてズンズン入ってきた。

――――――。


「宮田さん、おはよう。今日寒いですね。」

「そうねー、寒いね。風も強くて」

「……。」

「え?終わり?」


「え?どうしたの?」


状況が掴めなくて宮田さんが苦笑いする。


「…ねぇ宮田さん」

「はい?」

「今日、6時間勤務でしょ?」

「そうだよ。」

「手空いたら声掛けてもらってもいいですか?15分くらい欲しいです。」

「分かりました。うん?でもどうしたの?」

「僕とデートしましょ。そこのスーパーまで」

「いいけど、えー。なんかデートって。」

「僕らしくないですか?」

「そう。なんか面白い。ごめんね。」


宮田さんが笑い出す。


―――しばらくして宮田と僕の車でスーパーへ出かけた。


「宮田さん、休憩室に暖かいの起きたいんだよね。でも俺、センスないからさ。スティックコーヒーみたいなのあるとよくない?」

「あーたしかに。あるといいよね。まぁねー。涼太君、あんまりせんすないからねー。」

「本当にないんですよねー。いつも西田に頼ってばっかで。」

「でもいいんじゃない?苦手なことあっても。」

「そうですか?」

「だってそうじゃない?今なら結月ちゃんだっているし」


「……。」

「いいと思うけどな。」

「昨日…キスした」

「あらー。陰ながら応援してるからね。」

「ありがとうございます。」


微笑む宮田さんに僕は照れ笑いした。




―――――――――「ただいま戻りましたー。」


「結月ちゃん、今日は空いてる?ご飯行こうよ。どこがいい?結月ちゃん何食べたい?」


僕は西田男性社員を睨みつけた。

「え?なに?え?」


「結月、行きたいなら行け。」


結月は賢い子。直ぐに答えた。


「行きません。行く気もありません。仕事では尊敬する所もたくさんありますが、それ以外は魅力を感じません。」

「そ、、そう?あ、うん。」


宮田さんはそれを見て微笑んでた。


「結月、ちょっと捜し物行くぞ」


僕は結月の手を引いて地下へ行った。


狭い部屋に入って結月を抱き寄せた。


「……今すぐでも食っちまいたい。そうすることで安心できるなら。でも何回お前犯しても多分安心なんて出来ない。無理やりやって傷付けるだけなら、他のやり方考えたい。こんな感情初めてだからわけがわかんない。でも、、お前が死ぬほど好き。」


結月は僕に抱き着いてキスした。

僕は結月を強く、強く抱きしめた。


「涼ちゃん、大丈夫だよ。私は涼ちゃんしか興味ないから。安心して。」


「……うん。」

「大好きだよ。」

「結月は俺の宝物だよ。」

「ありがとう。」



―――――――――。


「遊塚。」

「はい。」


「遊塚。」

「なんですか?」


「遊塚。」

「あのさ。」


―――――――――――閉店後。


「お前ら付き合ってんの?」と西田。

「いや、まだ。でも手出すな。」

「あ、なるほどね。わかったわ。」

「しつこくすんなよ。」

「わかってるって。お前怒らしたら怖いの知ってるからするわけねーじゃん。」

「……止めてな」

「?」

「結月が可愛過ぎてムカついたらキレることもあるかもだから。お客さんとかに殴りかかったら止めて欲しい。」

「わかった。その時は止めてやるから。」

「ありがとう。」

「遊塚、可愛いもんな。」

「それだけじゃない。あいつは、唯一俺の中に普通に入ってきた。」

「そうだよな。見ててわかるわ。」


「あ、西田これ。」

「お!うまそ!」

「営業さんから貰ったけど俺、焼酎苦手で。」

「そうだよな。いいのもらった!」



―――――――――――――――。



「結月ー。」

「掃除終わったー。」

「お疲れ。帰るぞ。送ってく」

「うん。お願いします。」


結月が笑顔でそう言う。


「……送ってくの当たり前だし俺がやりたいから送る。……あ、いや、そう意味じゃなくて……」

「わかってるから。『お願いするな』って言いたいんでしょ?『俺が送りたいから』って」

「お前は凄いな…」

「涼ちゃん」

「ん?」

「そう言う涼ちゃん大好きだよ」

「俺も。」



――――――。

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