第3話 じわり、じわり。

 ババアのせいで真由香ちゃんに距離を置かれたらどうしようと思ったけど翌日も普通に接してくれた。嬉しい。

 派遣の彼女は経理部で内勤をしている。

 休憩所でガラガラ声の総務部長の声真似をしたらウケた。笑った声が可愛い。


 出会って数日が経った。真由香ちゃんとは順調に距離を詰めている。くるくると表情が変わるし、退勤後につけている香水の匂いがたまらない。そろそろ手を出したいが社内の女の子なので慎重に口説くことにする。


 一つ気になることがある。

 どうにも体調が悪そうなのだ。まだ二十歳そこそこだろうにやたら首や肩を回して気にしているし、デスクでお弁当食べているところをチラ見すると小さな弁当箱の中身を半分残していた。

 ダイエットでもしているんだろうか。俺はちょっとくらいふくよかな方が、抱く時気持ちよくて好きなのに。


 休憩所や退勤後、よく話すようになり何日か経った日。

「領収書? こっちで預かるから」

 俺があまりにもちょいちょい経理部に来るもんだから、警戒したクソババアがガードしたのかと思ったら真由香ちゃんのデスクは空いていた。

「あれ、真由香ちゃんは?」

「倉橋さんもしくは倉橋社員って言いなさいよ」

 冷ややかな目。もう年増で男から相手にされないからイラついてるんだろうな。更年期ってやつか。

 「今日は体調悪いって。土日で良くなるといいけど」

 「ふうん」

 連絡先を聞いておいてよかった。体調が悪い女には心配するメールを送っておけばまた好感度が上がる。今夜は別な女と会うことにしよう。

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