第11話
「僕は
「「つねひごろなんじけん……まきこまれんたろう?」」お嬢様と執事は同時につぶやく。名字と名前の区切りは合っているんだろうか、と一抹の不安を覚えながら。
「はい!」
美青年は微笑む。笑顔がまぶしい。
コホン、と巻込蓮太郎は咳払いし、両手を広げ、やや芝居がかった仕草で語り出した。
「勤務中じゃないのか」と言いたげな周囲の注目を集めつつ、歩道の真ん中で。
「――僕は行く先々で殺人事件に巻き込まれてきました。具体的には2時間に1件ペースですね。
警視庁では『死神』『疫病神』『すぐ退職して欲しい刑事ナンバーワンの男』と呼ばれています。そして!」
ここで彼はやや胸を張った。
「同時に検挙率ナンバーワンです。常日頃ひっきりなしに事件が起きるので生活に支障が出ないよう努力して推理力を上げました!」
「えっそれはうらやましい……いいえ大変な体質ですね」
果報は愛想笑いをした。通り向かいでひったくりが派手に転び、警察官と被害者が追いつき逮捕するのを執事は見た。
愛想笑いでこの威力。さすがお嬢様、と言いたいところだが彼の心中は穏やかではなかった。
――なんなんだこの刑事は。それ以上お嬢様を見つめるんじゃない。なんだか視線が熱っぽくなってきた。そろそろ割って入ろうか。
そんな想いを抱く執事、快刀乱麻をよそに刑事は
「あのテロリストを尾行して1時間。もうとっくに僕自身脈絡なく次の殺人事件に巻き込まれてもおかしくないのですが――貴女を見た時から殺人事件が発生しないんです。
どうやら貴女は僕の巻き込まれ体質をも打ち消す類まれなる幸運の持ち主のようだ。
――どうでしょう、僕とお付き合い、いいえ結婚してくれませんか?」
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