第3話 初デートで別れ話された話
前回のお話は、共感性羞恥MAXの失恋話であったが、今回は少し悲しい内容かもしれない。
では、早速参ろう。
おっと、先にお伝えしておきたいことがある。
今回のお話では、「彼女」という名詞が多数出てくるが、そのうちのほとんどすべてが人称代名詞であって、特定の誰かを「ガールフレンド」として指す語ではない、ということはご理解いただきたい。
前回のお話から数か月たち、僕のクラスに一人の転校生がやってくる。
今思えば、転校生がやってくるというのは、小学生にとっては大きなイベントだな、と感じる。中学では転入試験などはなく、退学はあっても、転入学はなかった。
さて話を戻すと、当時の僕にとっても、転校生が来ることというのは大きな出来事であり、その転校生が自分のクラスにやってくるともなれば、テンションが上がらないはずなどない。
そして、晴れて転校生が僕のクラスにやってくる日となり。
当時の僕は、「可愛い女の子来るかな!?」など、不純な期待は抱いていなかった。
単純に、自分の過ごす環境に、新たな仲間が加わるということへのワクワクだけであった。
そして、彼女こそが、のちに初デートで僕に別れ話を切り出すのである…!
僕たちは、偶然にも新聞係という係でともに仕事をすることになった。
クラスの壁に掲出する新聞の作成を担う係だ。
一緒に新聞を作成していく中で、僕は彼女の絵を描くスキルが高いことに気が付く。
それはささいなきっかけだった。
新聞に4コマ漫画を掲載しよう!と、僕から提案したものの、僕は絵を描くのが上手くない。
だが、彼女は乗り気になってくれて、「私が描くよ!」と名乗り出てくれた。
そうして、学級新聞に4コマ漫画を掲載するという企画が始まったのである。
何度か彼女の4コマ漫画や、自由帳にたくさん書き込まれたイラストを眺めているうちに、もっと彼女の描く絵を見たくなってしまった。
そこである日、僕は彼女に、「こんな感じの絵を描いてほしいんだけど…」と、相談してみた。
すると、彼女は快諾して、何とその場で描き上げてしまったのだ。
その出来は言わずもがな素晴らしく、当時の僕は大いに満足したのだった…
そのように日々を過ごしていった僕たちであったが、いつからか、僕は彼女から猛烈にアタックされるようになってしまったのだ…
このアタックとは、もちろん恋愛においてのアタックとなるわけだが、別に
だが、僕としては、彼女の思いにまっすぐに向き合って、誠実な答えを出すということができずにいた。
これまで話してきた通り、僕は何度か辛い失恋を経験してきているし、彼女を本当に幸せにできるのか、という疑問もあった。
弱気になっている自分が、確かにそこにいた。
ところがある日、僕は気が付いた。
僕は最初、彼女の絵に惚れ込んだ。
そしてその後、彼女自身に惚れ込んでしまったのだ。
自分で書いていて恥ずかしくなるが、これが事実なのだ。
だから僕は覚悟を決め、ある雨の日、傘を忘れたと嘆いているその子を誘い、いわゆる”相合傘”をして帰った。
そしてその傘の中で、僕は人生で初めて告白というものをした。
ここまでは、甘酸っぱい青春の1ページのように感じられるかもしれない(感じられないかもしれないが…)。だが、本題はここからである。
それから1年くらいは、校内ですれ違えば軽く話をしたり、微笑んだりするといった関係性を維持したのだが…
忘れもしない、2月上旬の寒い日に、向こうからデートに誘ってきた。
デートと言っても、その日の放課後に、学校近くの公園で遊ぼうという誘いだったが。
彼女から誘われて、断る彼氏がいるだろうか、いや、いない。
というわけで、僕は条件反射的に彼女からの誘いを承諾し、その日の授業が終わると、ウキウキで待ち合わせ場所の公園に向かった。
だがこの時は知る由もなかった、これが、最初で最後のデートになるということを。
彼女は待ち合わせ時間ぴったりにやってきた。
僕は彼女が寒くないか気を配ったり、持参したお菓子を一緒に食べようと誘ったりするも、どうも彼女の反応は良くない。
どうしたものかと思っていると、突如として彼女は話し始めた。
「私ね、○○君のことが好きかもしれない」
(あ、デジャブだ)
そう思った。
過去の記憶が高速で脳内を駆け巡り、僕は頭が真っ白になってしまった。
かろうじて、応答することはできたが、さぞぎこちない返事であっただろう。
そして別れ際、僕は
「じゃあ、俺、こっちだから…」
と言って家路についた。
今思えばあの日、僕に別れを告げるために覚悟を決めてあの場に来てくれたんだと思うと、少し心が痛む。
彼女は今でも、絵を描いているだろうか。
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