第16話 これから

 テーブルに並べられた、私の理想の朝食。


「天気いいですね、今日」

 

 向かいには微笑む千早君。


「僕、今日一日空いてるんです。

 水族館でも出かけません?

 あ、もし奈津さんがよかったら、ですけど」

「えと……私」

 瞬間、頭に痛みが走って、私は顔をしかめる。


「大丈夫ですか?」

「うん……ちょっとズキッとしただけ」

「無理しないでくださいね。

 ごはん、温かいうちにどうぞ」

 いただきます、と千早君は食べ始める。


 私、本当に二日酔いなんだろうか。

 本能が警告を発した、なんてこと、ないだろうか。

 

 たぶん千早君は私のために自分を変えている。それだけ考えると怖いけど、根本には私への愛がある。


 推しの姿になり、運命の再会を装い、デートを仕込み、つぶやいた通りの朝食を作る。


 これは「私の事考えてやってくれたのね!」と感激する許容範囲内なんだろうか。


 答えが出せない。



 私は朝食を見下ろし、ごくりと唾を飲み込んだ。

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千早君の愛が重い 蒼生光希 @mitsuki_aoi

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