第7話 再会
「やだなぁ先生、僕ですよ僕、覚えてません?
千早薫です」
「千早……君?」
そう言われても信じられないくらいに。
目の前の彼はジアン君そっくりだった。
長い黒髪は茶髪になり、アシンメトリーの
何より昔の彼は、こんなに堂々としてなかった。
そういえば私、彼のこと振ったんだっけ……。
「先生、どうしました?」
千早君は手を放し、私の顔をのぞきこむ。
「えと、ごめんね……好きなアイドルに似てて」
私は傘を持ち直し「先生の顔」に戻る。
「え、もしかして先生も?」
「もって、何」
「僕、ジアン君のファンなんです!」
それは雨降る夜でもまぶしい笑顔だった。
そうなんだ、と答えながら顔が赤くなるのがわかる。
何考えてるの、私。
彼は元教え子なのに。
「えと……じゃあ、私はこれで」
「そうですか。暗いので気をつけてくださいね。じゃ」
彼は会釈して、あっさり去っていった。
あの告白から何年経っただろう。背も伸びていたし、何よりあの顔。危うく妄想が広がりそうで。
「いや……ないない」
声に出してつぶやき、ようやく帰路につく。
偶然の再会。
彼とはそれきりのはずだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます