第6話 つぶやき

 それまで元カレに送っていた日々の感情はTwitteにつぶやくようになった。


「上司、全然消毒手伝ってくれない。

 私の手荒れがうつればいいのに」


「理想の朝食食べたい。トーストと目玉焼きとサラダ、コーンスープ、カフェオレにヨーグルト」

「てか人の作ったごはん食べたい」


「スーパーの惣菜飽きたー!

 でも20時以降の割引シールはお財布に優しいんだよなぁ」


「ジアン君マジ性格も良い。元カレと段違い。比べるのが申し訳ない」

「彼女できたらきっと大事にしてくれるよね」「水族館デートしたい」


 推しを想って生きるのは楽しい。


 そのくせふと、「このまま1人なのかな」と思うと寂しさもよぎる。長年の恋人をなくした喪失感は大きかった。


 だけど、運命の出会いが訪れた。



 しとしとと雨が降る夜。私は帰り道で「ジアン君と相合傘したら目線はこのくらいかな」なんて妄想をしていた。


 そして人にぶつかった。


 よろけた私は、倒れそうになるのを引っ張られ、助けられた。


「あ、ありがとうございます」

「すみません、大丈夫ですか?」


 私は相手の顔を見て固まった。

 夢でも見ているんじゃないかと思った。


「……ジアン君?」

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