第5話 仕事と推し

 あっという間に数年が経った。


 ついに三年生の担任になって、大変なのは覚悟してたけど、感染症が追い打ちをかけた。


 ただでさえ忙しいのに、やることが多すぎる。休んだ先生のフォローに消毒、リモート授業だって初めてなのに、年配の先生たちは「若いからわかるでしょ」と頼ってくる。


 本当なら、恋人が心の支えになってくれるはずだった。それなのに。


 彼とはつい先日別れた。

 職場の後輩と浮気していたのだ。

 ビデオ通話した時にブランド物の赤いバッグが写りこんでいた。私との結婚資金を彼女に貢いでいたらしい。

 けっこうな修羅場になって、心に傷を負った。

 

 友達に愚痴りたくても皆家庭持ちで気を使わせてしまう。職場からは人が多い商業施設に行くことすら禁じられていて、買い物で憂さ晴らしもできない。

 

 心の支えになったのは、推しとTwitteだった。


 ライブ配信とDVD、SNSは毎日のように目を通した。

 お気に入りはジアン君がセンターの曲。彼が吐息とともに「사랑해요サランヘヨ(愛してる)」と言う度に、私は凝りもせず毎回ハートを撃ち抜かれている。

 何度も脳内再生しながら眠りにつき、起きて仕事に行く、その繰り返し。

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