第4話 彼

 マンションに帰り着いたのは19時すぎ。

 エレベーターを降りると、夜景に目がいった。


「あ、綺麗」

 紺から黒へ、グラデーションがかかっている。街並みが切り絵みたいなシルエットを作っていた。「今日もお疲れ様」の一言を添えて、すぐ彼氏に送った。


「綺麗な写真だね」

 晩ごはんを食べる頃、返事と一緒に届いたのはゲーム画面のスクショだった。イラストの美少女が笑顔を浮かべている。


「推しキャラ出たよー! 

 課金したかいあった!」

 そしてスタンプ連打。めちゃくちゃ喜んでいる。


 一瞬、「結婚資金貯めるんじゃなかったの?」と眉をひそめたが、仕事に悩む彼を支えた時期を思うと「まあいいか」と気を取り直す。

 よかったね、課金はほどほどにしなよ、と送った。


 Instaにも写真をUPすると、ルミがランチの写真を上げていた。彼女はジアン君と同じグループのシウ君を推している。

 昔はただの同級生だったのに、アイドル好きアカウントを見ていたらルミのプロフに母校の名前を見つけた。以来、とても仲良くしている。ネットの縁って不思議だ。


 いいねを押してから今度はTwitteを開くと、「ルミ@韓国アイドル好き垢」からフォローされていた。IDも@rumi0414siuloveとルミらしい。

 Twitteも始めたんだ。

 即フォロバして、タイムラインにいいねしまくり、ライブDVDで癒されて眠る。今日はおうち残業にならなくてよかった。明日はまた6時前に起きて、仕事に行って……。

 

 結婚するまでは、こんな日常が続いていくんだろうな。

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