第3話 推し

「なにかありました? 顔、暗いですよ」


 職員室に戻ると、隣の席の三浦先生が声をかけてくれた。同性で気が合う、話しやすい先輩だ。


「いやあの、こくられまして」

桜井さくらい先生、美人ですもんねー」

「三浦先生も男子校フィルターかかってるでしょ、やめてくださいよ」

「で、振ったの?」

「もちろん」

「でしょうね」

「ジアン君みたいな子だったら考えたんですけどね」

 私はバッグにつけているジアン君の名前入りストラップに目をやる。


「韓国アイドルの?

 あんなかっこいい子はうちにはいませんよ」

「ですよね……」

 そうして私達は仕事に戻る。


 オープンスクールの準備、部活動引率、休み明けの実力テスト準備……仕事は山ほどある。夕方には「そういや今日告白されたな」ってくらい、遠い出来事になっていた。

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