コンソールオープン

 ゴーレムの拳が地面を叩きつけるたび、地面にはクレーターのような拳跡が残る。俺はその光景を見てゾッとしながら、必死に逃げ回る。足元が崩れ、ゴーレムの巨腕が次々と振り下ろされるが、なんとか回避している。


 一方、俺の逃げ惑う姿を、クラリエは安全な「台座」から悠然と見下ろしている。


「このっ、魔剣め!後でへし折ってやるからな!」


 俺の怒鳴り声がダンジョン中に響く。だが、クラリエの高笑いがそれをかき消した。


「あっははははっ!」


 その笑い声がやたらとムカつく。くそ、何か手はないのか?――いや、ある。


「コンソールオープン!」


 突然、頭の中にシステム音が響く。


「お呼びでしょうか?童帝様。」


「もう童帝様でもなんでもいい!だから、ゴーレムをなんとかしてくれ!」


 地面が割れる音がすぐ近くで響き、俺は必死にシステムに訴えた。


「了解致しました。ダンジョンの全コントロール権限を主様に移行します。30秒ほどお待ちくださいにゃん♡」


「にゃん♡……じゃねえよ!早く、早くしてくれ!」


 俺のスタミナはもう限界。必死に逃げながらも、ゴーレムの巨大な拳がスレスレで俺の頭をかすめる。汗が滝のように流れ、力尽きた俺はその場にスライディングして倒れ込んだ。狙ったかのように、ゴーレムの拳が俺に向かって振り下ろされる。


「くそっ!」


 だが奇跡的に拳は俺に届かず、ほんの少しの差で命拾いした。


「ダンジョンコントロール権限を全て主様、あっ、童帝様に移行しました。」


「た、助かった…!ありがとう!」


 俺は安堵の息をつくが、ふと気づく。ゴーレムが動いていない。


「おい、どうした?ゴーレムが止まってるぞ!」


 どうやら俺がダンジョンを完全にコントロールできるようになったらしい。ということは、クラリエもこのダンジョンの一部として扱えるのか?


「いいえ、それはできません。魔剣の承認を得るためには、主様の体液が必要となります。つまり、キスをするか、他の色々なことをして頂かないといけませんね。」


「まだ俺、何も言ってないんだけど…もしかして心の声が全部ダダ漏れ?」


「はい、そうです。」


「俺がピンチなのを知ってて無視してたのか?」


「すみません、よく聞き取れませんでした。」


「おい!!」


 俺は怒りに任せて立ち上がり、クラリエのいる台座に向かって歩き出した。ゴーレムはもう動かない。俺の邪魔をするものは何もない。


 台座にたどり着いた俺は、もう一度魔剣を抜こうとした。しかし――抜けない!くそ、こいつまだ抵抗してやがる。


「いい加減、諦めろ!」


 俺は力いっぱいに魔剣を握りしめ、再び抜こうと試みる。


「いたたたたっ!女の子なんだから、もっと優しくしてよ!」


「魔剣に変わる女の子なんて聞いたことないし、見たこともねえよ!」


「…あんたなんか、あんたなんか主として認めないんだからね!」


 はい、ツンデレいただきました~。しかし、一体どうしたら主として認めてくれるんだ?


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