ダンジョンギミック
もしかして、魔剣から声が聞こえてきている?
そんなわけないだろう。俺は首をかしげて、自分の耳を疑った。
「はなしてよっ!!」
いきなりバチバチッと魔剣の柄から電撃が走り、痛みが全身を襲った。俺は思わず手から魔剣を離してしまう。
「痛ってぇ!」
まさか、魔剣に拒否されたのか? 魔剣に意思があるなんて、初めて知った。やっぱり異世界は不思議でいっぱいだ。
そう思いながら再度、魔剣に手を伸ばす。だが、その瞬間、魔剣が光り始め、なんとその形が人型へと変わり始めた。
だんだんとその光が少女の姿を成していく。まず胸がふくらみ、次に太もも、お尻、脚と人間の形に変わり、赤く燃え上がる長髪が揺れる。瞳には気の強さが宿り、整った顔立ちの美少女が目の前に現れた。
「誰だか知らないけれど、私を勝手に振り回すなんて失礼じゃない?魔剣の扱い方、ちゃんとわかってるの?」
「えっ!? いや、すいません。魔剣って美少女になったりするんだっけ?俺、そんな設定頼んだ覚えはないんだけど…」
―魔剣と美少女はセットしておきます。
「あっ、そうか!あれか!でも、そういうセットじゃないんだよな~」
俺は頭を抱えた。魔剣が美少女になるなんて、一体どうなってるんだ?しかも、ハーレムダンジョンなんて言われてたけど、どうなってんだよ、この世界。
「ちなみに、お名前を聞いても?」
「まずは、あなたから名乗りなさい!」
「俺は、八重隼人。」
「ふふっ、名を聞いたなら跪きなさい。私は封印されし魔剣の一体、クラリエよ。」
彼女は堂々とした態度で手のひらを前に出し、そう名乗った。
「へー、クラリエって言うんだ。」
「あれ?なんだか反応が薄いわね。もう一度名乗った方がいいかしら?ふふっ、いたっ!」
「もういいよ。お前が魔剣なんだな。わかったから、で、どうしたら俺のことを主として認めてくれるんだ?」
「それは―」
突然、ダンジョン内に警報のようなアラームが響き渡る。その音に俺は思わず振り返った。目の前で土の塊が動き出し、巨大なゴーレムへと形を変えていく。
「お、おいおいおい…」
思わず声が出てしまった。俺の身長が165センチくらいだから、ゴーレムはその15倍はある。ゴツゴツとした腕と脚がまるで人間のように動いている。
「このゴーレムを倒すことよ!」
「なんか、さっきのお店紹介みたいなノリなんだが…それにしてもデカすぎだろ…」
「芸能人って何?まぁいいわ、頑張ってね〜。私はまた眠りにつくから。」
「おい、ちょっと待て―」
俺の叫びも虚しく、ゴーレムの拳が俺の顔のすぐ横をかすめていく。ドンッという衝撃と共に、俺は一瞬で汗が吹き出した。
「やばい、やばい、死ぬ!俺、死ぬのか!? 二度目の死!? せっかく異世界転生してこれからハーレム作ろうってのに!?」
どうやってこのデカブツを倒せって言うんだよ、無理だろう。武器もないし、頼みの綱だった魔剣は俺に拒否反応を示してるし…これ、詰んだんじゃないか?
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