第9話 絶望

 いつも、どの嬢とも瞬間恋愛が成立するわけではない。恋愛どころか嫌悪感、不快感を覚えたこともたまにはある。そんな絶望の思い出を順番に記す。


 仕事帰り、アルコールが入ってちょっと色気が欲しくなったわたしは、飲み屋街からあやしげな通りへふらふらと吸い込まれていった、大阪の京橋という場末の街である。そこでお兄さんに声を掛けられる。”裸のオンナがいいことしてくれます”との言葉にひっぱられて店の中へ。暗い店内を兄さんに案内されて席につく。するとボックス席を囲うカーテンをさっと閉められた。その途端に真っ暗闇となり、右も左も何も見えない。そこに嬢が入ってきて隣に座る。嬢の姿はまったく見えない。話す声は、トーンが低く、、、、若くはない。おばちゃんだ。おばちゃんは、「これしてあげる、あれしてあげる」といいながら値段を吹っかけてくる。おばちゃんがしてあげるという”ヘリコプター”とはどんな技なのか?あまり興味がわかない。しかも高い。ファッションヘルスであれば若いお姉さんでも1万円からお釣りがくるのに、姿の見えないおばちゃんにそれ以上を払いたくない。とはいうものの、今さら店を出るわけにもいかないので、一番安い金額で折り合う。おばちゃんはわたしの手を引き、おばちゃんの身体を触らせる。ちょっと湿ったその場所で義理で指を動かす。おばちゃんは、「お兄さん、気持ちよくなったから、奥の部屋に行こう」と誘ってくる。しかし、ボックス席で十分恐怖なので、さらに奥まで深入りする勇気も元気もない。丁重にお断りする。おばちゃんは未練たらしくしながらも、わたしの身体を口に入れて、奉仕いただいた。暗闇でなにも見えないなか、肌感覚だけなら、おばちゃんもお姉さんもわからない。気持ちよくなって終了。そそくさを店を後にした。呼び込みにつられてはいけないという教訓であった。


 札幌、すすき野・・・魅力的な響きである。札幌に単身赴任していた悪友からは、値段が安く質が高いとコスパのよさを聞かされていた。北海道旅行の最終日にすすき野の街を徘徊した。まだ午前中なので店は少ない。午前中は学生バイトの嬢が相手してくれると期待して、適当にファッションヘルスに入店した。店員さんに好みを聞かれたので、”清楚系”とお願いした。しかしながら、現れた嬢は真逆のヤンキーであった、金髪、濃いメーク、そして目つきが悪い。機嫌がわるそう、侮蔑の目線である。すっかり萎えたわたしは、敗者のように肩を落として店を出た。


 人生最悪に打ちひしがれ、惨めな気持ちを抱いたのは神田でのこと。東京見物がてら、ちょっとフーゾクに寄ってみることにした。場所に疎いアウェーの土地。駅前から雑居ビル街に足を踏み入れると、はっぴを着たおっさんが立て看板をかついでいる。知らない土地で他に候補もないので、おっさんに案内され階段を降りて地下の店に向かう。店員に1万円を渡すと、部屋に通され、服を脱ぐように告げられた。いうとおりにパンツ一枚になっていると、スーツを着込んだ年増嬢が入ってきた。30歳半ばくらい、きつめの雰囲気だ。好みのタイプではない。ちょっと残念に思っていると、恐るべきことに2万円払えと要求してくる。さっき払ったのは入場料でサービス料は別だという。「わたしは銀座のホステスなんだから、特別なんだよ」などと上から目線で言ってくる。3万円は予算オーバーなので出ていきたいが、すでに服を脱いでしまっているので後戻りしにくい。それに1万円が捨て金になる。しぶしぶ、なけなしの2万円を嬢に渡す。すると、わたしの下着を脱がし、手でも口でもなく、バイブレータのようなもので刺激してくる。肉体的にも精神的にもうれしくも快感もない。苦痛でしかない。しかし不本意ながらも射精してしまう。屈辱的な気持ちで服を着て、帰ろうとする。すると、自称銀座のホステスは、さらに3千円払えと要求してきた。怒りに震えたわたしはきっぱりと断る。自称銀座ホステスは「フツー払うけどね」と嫌味をいってきた。

 さらに追い打ちをかけるような悲劇がその後に待っていた。宿泊先のホテルの風呂で身体を清め、嫌な体験を洗い流そうとすると、わたしの分身はぶよぶよに腫れあがりって醜い物体と化していた。バイブレーションにより腫れあがったのか、何か薬物を塗られたのか?山手線に身を投げてしまいたくなるような惨めで悲惨な経験であった。

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