第6話 吉原

 ヨシワラといえば、江戸時代から続く遊女の街。社会勉強のため一度は覗いてみたが、やはり本物のソープには容易には突撃する勇気はない。ただ、悪友はソープ嬢はかわいい、ほんまにかわいい。。。と遠い目をして呟く。フーゾク誌の広告にはびっくりするほどかわいい娘がいるではないか!


 30後半でわたしは、ステップアップを目指して会社を辞めた。次の仕事まで1ヵ月の空き時間ができた。この機会に欧州旅行でもして、日本人サッカー選手を本場で観てみようか・・・などと想像しながら、子育てに追われるヨメをみると、自分だけ呑気に海外旅行するのは気が引ける。そこで思いついたのが、ヨシワラ探訪である。海外旅行に比べれば1/10の金額で、未知の世界に足を踏み入れることができるのである。そうと決めて、早速、新幹線で東京に向かい、鶯谷駅に降りた。東京でありながら、ビルも繁華街も何もない駅。駅前のタクシーの乗る。何もわからないまま、運転手に案内された喫茶店に入る。そこはソープ店の紹介所になっていて、予算を告げると嬢の写真をいくつか見せられる。飲み物のメニューではなく嬢のメニューなのだ。ソープ童貞のわたしはちょっと悩む。7万、5万はあまりに高過ぎる気がする。むかし、デートクラブで支払った3万円が妥当ではないかと。3万円で示された嬢の写真は2枚。ちょっとあどけない色白のぽっちゃり女子、そして目鼻立ちのしっかりしたエキゾチック女子。わたしの好みはちょっと地味目な色白ぽっちゃり女子の方なんだけど、海外旅行の代わりのヨシワラなので、ちょっと冒険したくなってエキゾチック女子を指名してみた。喫茶店の店員さんは、ソープ店に電話をかけ、指名を告げる。飲み物を飲み終えたころ、迎えの車が来た。そうして、ついにヨシワラのソープ店に入ったのである。


 案内された小部屋で待つと、ふつうに着衣の嬢がきて、あいさつして軽くお話する。写真通り、ちょっとラテン系のような気の強そうな女子である。服を脱いで風呂場にいって、嬢の身体を眺める。浅黒くしまった身体、腕には小さなタトゥーがある。う~ん、瞬間恋愛にならない。わたしは怖そうなオンナが苦手なのである。嬢はルックスも性格はよくて、親切に話しかけながら、いろいろ身体にサービスをしてくれるのだけれど、、、いっこうにわたしの身体は反応しない。緊張と警戒心で弱気なのである。時間だけは虚しく過ぎていった。

 こうしてわたしは念願のヨシワラに入門するも、童貞のまま立ち去ったのである。やっぱり、恋愛感情にならないとエッチはできない。瞬間恋愛の神髄を思い知ったのであった。

 

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