第5話 異国デート
33歳でフーゾクに足を踏み入れたわたしであったが、本番行為はちょっと敷居が高かった。金銭的にも気軽に行ける額ではないし、やはりちょっと怖いというか未知の恐怖がある。自ら冒険する気はなかったが、はからずも突然その時がやってきた。
お得意先の課長の接待駆り出され、自社の部長、先輩社員そしてわたしの計4名は普通に飲食した。二次会の場を求めて、わが部長が先導してスナック街を進んでいった。とある一室の扉を開ける。”花束”という店だ。なかはごく普通のクラブのようだ。客は少なめで空席が多く、4~5名のホステスがお待ち状態。我々4名が席につくと、ホステスは各々の隣に座り、水割りを作る。その時気付いた。言葉遣いが違う? ルックスは日本人ホステスと見分けはつかないが、イントネーションが独特なのである。聞けば皆コリア嬢とのこと。年齢は30前後か?普通の嬢3名と冬のソナタのチェジウを彷彿させる特上の美女1名である。しばし他愛ないお話をしていると、わが部長から突然命令が下った。「お前、行け!」行けとはなんのことか?理解できていないわたしに部長は説明する。ことはデートクラブなのだと。ママに万札3枚を渡して、気に入った嬢を指名し、一緒にホテルに入るシステムなのだ。
フーゾク童貞のわたしは、困惑し動揺した。しかし、迷うわたしに部長は厳しい表情で厳命を下すのである。スポーツ新聞片手に出勤し、ゴルフと夜遊びに精力をそそぐ絶倫部長にとっては、まじめ社員のわたしは一皮むける必要はあると思っていたのだろう。結局、背中を押されるがままに、隣のお姉さんと夜のホテル街に向かうことになった。ちなみに、チェジウ嬢は当然ながらお得意先様の指名を受けた。
30歳前に結婚してからというものラブホテルに縁がなかったわたしであるが、ラブホテルの受付のパネルで、嬢と一緒に部屋を選択するのは、なんか恋人っぽくてちょっとうれしい。一緒にお風呂に入り、、、そして部屋に戻るとベッドで嬢を抱いた。いわゆるソープという業態ではなく、普通に恋人っぽく時間を過ごせるところが、デートクラブの妙味であった。ホテルを出て夜の街を手をつないで歩いたあと、お別れはちょっと寂しく切ない気持ちが残る。
その後、数日が経過。仕事中に携帯が鳴る。見覚えのないナンバー表示。受電すると、「〇〇さ~ん、、、、逢える?」外国訛りの女性からであった。こうして店を通さず個人営業するようだ。でも、瞬間恋愛はその場だけ。もうその隣国の嬢に逢うことはない。
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