1-2
振り子時計の針がチクタクと音を立て、一人、また一人と部屋から部員が退出していく。
ロドリゴ様も早々に退勤しており、気がつけば残っているのは私だけになっていた。
薄暗い部屋の中で、空腹と
「はぁ……今日も、終わらない……でもあと少し。残りはちょっとだ」
昨日もほぼ
「だめだ。一回帰ってシャワー浴びて、
私は立ち上がると、
私の住まいはこの研究
休む
仕事を辞めるようなことになればメイフィールド家に連れ
王城以外の職場で貴族の娘が働くことは極めて難しく、また、王城には魔法陣を調べるための
王城であれば国王の役に立つ存在として
「はぁぁ。
いつものように職場と自室を結ぶ長い
男性のうめき声のようなものが
王城内は基本的に
「あ、あのぉ。
次の瞬間、その中から白い何かが飛び出てきて私は目を丸くする。
「へ? え? 何!?」
一
それに見た目も猫というよりは、
「え? えぇぇぇ?」
大きな丸い青い瞳がくりんとしていて
「ふわぁぁぁ」
とてとてとまるで足音が聞こえてくるかのような、可愛らしい歩き方であった。
そして、何より、こちらを見上げてくる様が、天使かというくらいに愛らしい。
私は思わず
「かわいぃぃぃ」
抱き上げてみればそれは思っていた以上にふわふわとしていて気持ちがよかった。
おそらくその時の私の思考力はかなり低下していたのだと思う。なんの生き物なのかも分からないけれど、あまりの可愛さに浮かれていた。
徹夜続き
「君、どこかの
私のあまりのテンションに、もふもふは驚いたような顔をしてもがくけれど、どうにか頭を
「ほらほら、いい子だから。ね?」
「みゃっ! みゃお――ん……」
鳴き声まで可愛らしい。
自分の鳴き声を聞いて、どこかげんなりとした様子のもふもふは大人しくなり、私はそのまま自分の部屋へと連れて帰った。
ただ、それから私は
「ごごごご、ごめんね。すぐに片づけるからね! 大丈夫だよ! ごはん……え、何を食べるんだろう……」
「ごめんねぇ。大丈夫だからねぇ。あ、そうだ!
私は急いで可愛いもふもふちゃんが
それから
「ほら、こちらへどうぞ。魚の瓶詰、好きかなぁ?」
私は可愛らしい真っ白なもふもふをじっと見つめながら
もふもふは、目を細めて私と寝床とお盆の上を何度か見比べたあと、諦めたかのように「ふにゃ」と声を
「あなたってお行儀がいいのねぇ。可愛いー。あぁ。可愛い。あなたほど可愛い人に会ったことがないわ」
「ふ、ふにゃ!? なぁぁぁおん!? にゃにゃ!っ」
こちらを驚いたような表情で見つめてくるその瞳が、とても愛らしい。
あまりにも可愛らしくて
私はその姿をただただ
「あなたはどうしてそんなに可愛いの?」
「ふにゃー……」
これほどまでに可愛らしい生き物には初めて出会った。
もっと早く出会いたかったと感激しながら、その可愛らしい姿を今は
「はぁぁ。可愛い。癒やされる。昔からもふもふした生き物本当に好きなんだぁ。飼いたいけど、自分のことすらまともに出来ないから……とにかく、明日にはすぐに飼い主さん見つけるからね。たぶん、これだけ
そう
その仕草すら可愛くて
「はぁぁぁ。今だけもふちゃんって呼ぶね。もーふちゃん」
「……なぉ」
「え? え? 返事してくれたの? えぇぇぇ! 天才! 可愛い。ありがとう。はぁ尊い! よし、すぐにもふちゃんの危ないものとかどけちゃうからね! ふふふ。私はメリル。よろしくね、もふちゃん」
私は気合を入れて、とにかくもふちゃんにとって危険なものはどうにかしようと、奥の
そして出来るだけもふちゃんが快適にと片づけた私は、
「あー……とりあえず、今はこれで許してー。もふちゃん」
ちらりともふちゃんを見れば、机の上へと飛び乗り、こちらの様子をうかがいながら小首を
可愛い。
嫌がられるかなぁと思いながらそっと手を伸ばすと、もふちゃんは逃げることなく私の手に頭を
ふわふわの毛が気持ちよく、目を細めるもふちゃんが
最高に可愛い。
私はもふちゃんを思う存分撫でたあと、魔法陣射影綴りを取り出した。
もふちゃんが興味深そうにこちらを
「これはね、私の血と
「な……なぉ」
「分かってくれる? ああぁ。教えてあげるね!」
「な……お」
私はしばらくの間声を弾ませてもふちゃんに魔法陣について語りかけた。
久しぶりに話をするのですごくテンションが上がる。
こうやって魔法陣について語り合う友達がもっと
最近ティリーのお店にも遊びにいけていないなと、
私は魔法陣についてひとしきりしゃべると綴りを閉じ、
一気にしゃべったことで、つい体力を使いすぎた。
魔法陣射影綴りを眺めたらご飯を食べようと思っていたけれど、今はもう指一本も動かしたくない。
「可愛い、ああ、可愛い……はぁ……でも、お
意識が遠のいていく。本当はもっともふちゃんに触れて、一緒に遊んで過ごしたいけれども、体がもう限界だ。
私は
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