第3話空へ
高校生最後の年になっても合同授業は変わらなかった。
千里の高校は12月には避難民が退去してはいたが老朽化もして災害を直撃したため今すぐに倒壊の心配は無いがあちこちにひび割れが多く修繕工事をしなければならなかった。
「瑠璃、貴方の家すごいわね欲しいものを言ったら狩野さんがすぐ持ってくるんですから」
「千里はもう水樹家の養子なんだから」
千里は次郎吉おじさんのご厚意で瑠璃と同じ高校に編入になり制服も同じになった。
「そういえば千里はコロニー移住計画もう宇宙に打ち上げてるの知ってる?」
「ううん。宇宙に住むって考えられないね。まさか地球に似た惑星がないなら作っちゃえってなるとは思わなかった。」
二人は笑顔で登校するする。席につくと席についた生徒より空席が多かった。
生徒や若いものにも黒斑病流行しており、若ければ症状が早く、余命が短い。斑点が発見された次の日には全身に回り数日で死に至るパターンもある。
「千里、違和感あるねその制服」
後の席の桜子が鼻で笑いながら言う。
「もー桜子笑わないでよ私だって違和感あるんだから」
軽くポコポコと桜子を叩いて抵抗する。
他愛もないはなしに花を咲かせるとスピーカーから予鈴がなる。
予鈴がなり終わると担任の大田が入ってきて教卓に登ると皆が静かになる。
「昨日の夜相原が黒斑病で亡くなった。これから黙祷をする。」
皆が席を立ち大田の合図で黙祷をする。
この生活はいつまで続くのだろうか、クラスメイトがなくなり黙祷の時いつも思う。
クラスメイトが亡くなった次の日は空気が重く何時もよりも何倍も授業が長く感じる。
授業が終わると今年度から部活動が復帰となり運動場や体育館では運動部員の掛け声が聞こえる。
瑠璃はバレーボール部の主将になり最近放課後は体育館へ向かう。千里は前回の学校のときから帰宅部で瑠璃にバレー部を誘われたが皆の撃つスパイクやサーブに恐怖して断念した。
千里は授業が終わるとダッシュで学校の正門を出て家の反対側へと走っていく。
最近は近辺で飲食店やスーパーがたち、知里念願のゲームセンターの開店日だった。
個人店舗ではあったが、コンビニサイズの広さはあり新規タイトルのゲームが並ぶ。
千里は目をキラキラとさせて入園したが、千里が求めてるアーケード格闘ゲームは近年廃れており新作機種も出てないことから、ゲームセンターにはおいてなかった。
ガックリと肩を落として学校の方向へと歩いていくと小さな駄菓子屋があった。
店主は若いお兄さんで駄菓子の横にはコインゲーム等にの古き良きゲームが並んでいる。
ゲームのラインナップを見るために店舗に入ると一番奥にアーケードゲーム機の筐体があった。
千里は目が星になり細い通路を小走りで通り抜けるとその筐体では過去のゲームセンターでは格闘ゲームの横にあったシューティングゲームがこの駄菓子屋で起動している。
「店主さんこのアーケードゲーム機どうやって手に入れたの?」
店主は質問にえ?と返答をしてこの付近にあったゲームセンターを運営していた店主が店をしめるというから買ったんだよと答えた。
「いくらだった?」
店主は少し考えたがこれはお店のものだから答えられないと返答されたので手を合わせて手のひらを上下にこすりながらお願いとお願いしても駄目だった。でも希望はある。私から次郎吉おじさんには頼みづらいが瑠璃がいるということが。
急いで店を後にして店を出た。早く家に帰り作戦を練らなければ。
怪しまれないように上手く瑠璃を説得する方法が思いつかなかったため直球で瑠璃に聞いてみた。
「瑠璃、久しぶりに格闘ゲームしたくない?」
「良いよ。千里、でも今の訛ってる千里には負けないよ。」
すぐに既読がつき返事が来た。
「訛ってるって、瑠璃も同じじゃない。」
「あれ?言わなかった?あの店舗なくなった時にお父様にお願いして用意してもらったの」
聞いてなかった。もっと早くに瑠璃に聞いておくのだったと千里は後悔する。
災害時に時折やりたくなってはいたが皆が苦しんでいる時にと思いつつ我慢をしていた。
次の日の休みに瑠璃の家に行き大いに盛り上がりその日は瑠璃の家に一泊した。
それから数日が経ち蝉が鳴き始めた頃、打ち上げた部分コロニー接続が完了してテストも完了した。
本日は第一コロニーのアルファにスポンサー企業のお偉いさんや重鎮たちが出発する日がった。
勿論、次郎吉おじさんも呼ばれていて瑠璃達より先に行くとの話になってお付の方数名とロケットに乗り込んだ。
ロケットはコロニー開発と平行に行われ収容人数は20人と少ない。そのためにロケットは場所を変えて同時に発射される。
一つのロケットが打ち上がり起動に乗るもう一つのロケットのは発射体制に入りα地点からの成功の報告がくる。
2つ目のロケットは次郎吉おじさん達が乗っている。
ロケットが発射される。白い煙を巻き上げてゆっくりと上昇していく。
千里と瑠璃は付近の公園で観察して目では見えなくなるなまで見送った。
家に帰路につく最中に電光掲示板のニュースで次郎吉おじさんが笑顔でコロニーに入るシーンが放送されていた。
次郎吉おじさんがコロニーにいって1ヶ月後一般の方々用のロケットが次々と発射された。
宇宙行きのロケットに乗るのに1億円。コロニーに住むのに毎年5000万円する。
富裕層は次々に宇宙へ行き。一般の方は定員ギリギリの少し安いロケットに乗車する。
「おはようございます」
担任の大田先生が教室に入ってくる。教室にはもう千里と瑠璃しかいない。
二日前に桜子は黒斑病に耐えられず自室にて首をつった。
「では、教科書46ページを開いて」
大田は左手に教科書を持ち黒板に板書を始める。
「先生はロケットに乗らないのですか?」
千里は立ち上がり大田に向かって質問する
「あーそれな、先生は調子乗って両親の切符買ったらさ自分の分買う金がなくてさw」
大田は板書一度やめて千里の顔を見て笑いながら言う。
「で、お前らは次郎吉さんがお金を出してくれただろなんでここにいる。」
先生は疑問になり返す。
「それがね私寝坊しちゃうって乗り遅れちゃったの瑠璃は乗ればよかったのに乗り場で待ってたのよ」
千里は笑いながら答える。横では瑠璃は下を向いている。
「そうか、ではお前達二人今日は特別授業だな」
大田と千里は大笑いをする。
3時限の授業が終わるとお昼休みが始まる。
「よっしゃー瑠璃食堂行くよ!」
千里は瑠璃のてを掴み教室を勢いよく出ていく。
校舎内は人気もなく薄暗い。
「おばちゃん!スーパー焼き肉定食を2つ!」
千里は食堂に入ると大声で注文をするが返事は無い。
「千里もう、誰もいないんだよ」
瑠璃はクスクスと笑いながら千里の肩をポンポンと叩く。
「あいよー」
シャッター越しから声が聞こえてシャッターが開く。そこには腰巻きをつけた大田先生が厨房にいた。
「先生何してんの」
千里は驚きが隠せない。
「先生お料理ができるのですか?」
大田は右手を左胸に当てて「当たり前だ彼女いない歴=年齢だ」と胸を張っていう。
それは料理に関係があるのかわからないが先生に任せた。
大田は調理道具を慌ただしく探しつつ、調理をする横で千里はやじを飛ばす。
昼休みはとっくに終わりを迎えたが3人で昼飯を食べ後始末をした。
「そういえば、お前達お付の方とかが今もいるのか?」
大田はふと疑問になり二人に聞く
「お付きの人は皆コロニーに行ったよ。後は黒斑病で倒れた狩野さんだけ」
そっか、ではこれから大変だなぁ
「大丈夫だよ瑠璃の家自家発電の機器があるし」
「自家栽培もできますわ」
千里と瑠璃はめを輝かしている。
「それでは、ひとまず安心だな。では気を付けて帰れよ。」
大田は昼食をかきこんで立ち上がり食堂をあとにする。
「先生?午後の授業は?」
返事はなく、午後の授業には現れなかった。
「狩野さんただいま~」
千里は狩野さんの部屋を勢いよく開ける
「おかえりなさいませ千里お嬢様」
執事服を着て狩野は座りながら頭を下げた。
「狩野さん寝ておかないと」
千里は狩野の手を掴み引っ張るが狩野は断る
「千里様、瑠璃お嬢様はどちらに」
「疲れたから今日は寝るだって」
狩野さんは頷き胸ポケットに入ったものを差出す。
「瑠璃様は黒斑病なんですよね」
千里はしたお向き無視をする。
「ではこれを使ってください。次郎吉様のお部屋の鍵と金庫の鍵です。どうやら黒斑病の病状を抑える薬があるようです」
狩野は2枚のカードを差出す。
「薬…?」
黒斑病は世間では治せる病気ではなく過去に地中から噴射したことにより発生する病気と発覚したため皆が宇宙へ旅立った
「これはコロニー計画の計画実行にサポートした企業のトップ8人に配られたようです。ずっと供給できるものではない為世間には伏せられていたらしいです。」
「狩野さんも飲まないと」
「私はもう年です黒斑点を抑えたところで長くはありません。」
千里はわかりましたと狩野さんに頭を下げて出ていった。
次郎吉おじさんの部屋は狩野さんのお部屋の隣であった。
入口のスキャナーカードを読ませると赤く点灯していたライトが青く点灯する。
ドアを開けると通路の左右には高級感のある骨董品がずらりと並ぶ。その通路を抜けると大きな社長デスクがお迎えになる。
次郎吉おじさん部屋には金庫など無く大きな机のみ。
机には三段の棚が備え付けてあり一番下の大きな段はカードスロットが備え付けてありカードを通すと黒斑病塗り薬と記載されたプラケースがある。
チューブは7つ説明書によると黒斑に直接塗ると効果があるとのことでひとまず狩野さんのお部屋へ向うと狩野さんは椅子から崩れ落ちてこと切れていた。
狩野さんをベッドに運び瑠璃の部屋に行くと瑠璃はベットの上に横になり苦しそうにしていた。
「瑠璃!狩野さんに言われて次郎吉おじさんの部屋から薬持ってきた」
瑠璃は呼吸が浅く苦しそうにしつつ千里に目を合わせる。
瑠璃の黒斑病は右手の甲だけだったが夕方には右肩まで進行していた。
千里は瑠璃の上着を脱がせてチューブの薬を自分の指先につけ、まんべんなく塗る。
塗り薬はハーブの匂いを部屋中に匂わせて瑠璃の呼吸が少し楽になっている様に感じる。
「これでとりあえず、様子を見よ。大丈夫だよ伯父様が助けてくれる」
千里は瑠璃に再び服を着せて布団をかけた。
千里は瑠璃の部屋から去ると消毒のためにと風呂を沸かして風呂に入った。瑠璃の家のお風呂は大浴場になっており湯の張る方法がわからなかったため自宅まで走って帰り自宅の風呂に入った。
千里にはあの豪邸には住みにくく違和感がある為家のお風呂が落ち着く。
次の日、学校に行くと大田の姿はなくごめんなさいと誰もいない教室に頭を下げて学校を出た。
千里は家に帰らず瑠璃の容態の確認と薬を塗りに行った。
雨の日も強風の日も千里はめげずに瑠璃の看病に行くと容態は良くなっていき斑点が消えていった。
「千里ダイジョーブ?」
「大丈夫。千里ありがとう」
瑠璃の容態が回復していた喜びのあまり千里と瑠璃はジャンプしながら向かい合って一緒に回った。
「では、狩野さんにお礼言いに行こっか」
千里は瑠璃を連れて狩野さんのご遺体を地下室にあった大きな木箱に入れてお庭に埋めた。
葬儀場などに電話をしたが現在は皆が宇宙に行ってしまい残るのは黒斑病の患者か貧困層しかいない。
二人は狩野さんの墓に手を合わせてこれからの話をするのであった。
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