第一章8話 「権能vs権能」

 ノムキネ・アクトとゲンジ・チョウの勝負が始まった。お互いまずは様子見として軽い技で相手をいなす。


太陽炎プロミネンス・ファイヤ出力最小!」


 と叫び、ノムキネは温度50℃の炎をゲンジにぶつけた。しかし、


停止攻撃ストップ・アタック


 そうゲンジはいい、太陽炎プロミネンス・ファイヤを空中に固めた。止まっている太陽炎プロミネンス・ファイヤは熱を持っていないただの赤く光るだけの光となった。


「そんなのありですか?」


「これが古代の権能の凄いところやねんな。物理法則を完全に無視してんねん」


 あまりの出来事にノムキネは言葉をこぼす。それに対し、ゲンジは余裕そうに言う。


「では、これならどうですか?風爆ブロウ・オフ・ウィンド!」


「残念やけど、それも止めれんねん。停止攻撃ストップ・アタック

 

 ノムキネの風爆ブロウ・オフ・ウィンドも簡単に止められてしまった。


「さっきから受けてばっかやな。ほんなら、こっちもいかせてもらうで。空気停止ストップ・エアー


 そう言い、ゲンジは空気の動きを止めた。止めた空気を掴み、ノムキネに向かって放り投げた。


「——創造空間クリエイト・ホール


 ノムキネが新しい技を使う。クリエイト・ホールは小さいブラックホールを生成し、自分が選んだものを吸い込むことができる。吸い込まれたものがどこにいくのかは誰にも分からない。ノムキネ自身にも。

 そうして投げられた空気をブラックホールの中に吸い込んだ。


「そうくるんか。攻撃して空気と相殺させるんかと思ったけど、ブラックホールまで創れるとはなー。流石に予想外過ぎたわ」


「この技は本当にピンチの時にしか使わないと決めていたのですが、使ってなかったら結構やばそうだったので仕方ないですね」


「じゃあもうちょっと強い技を使ってみるわ。——無敵時間ストップ・ボディ


 ストップ・ボディと言ったゲンジの体は止まった。「停止」の力は人の体を止めることはできない。しかし、自分の体に受ける事象を一時的に止めることならできる。


「この技はな、1分間だけ自分の体に受ける事象を止めることが出来るっちゅう技や」


「そんなのチート過ぎますって!」


「ノムキネくんの技も十分チートやろ。ブラックホール創るとか」


「そうですかね?」


 2人の会話が少し続いた後、ノムキネは攻撃をせずに逃げる。何故なら攻撃の効かない今のゲンジを倒す術は無いからだ。


空気停止ストップ・エアー空気停止ストップ・エアー!」


 ゲンジは無敵の間に空気を止めて止めて止めまくり、リング内の空気をほとんど無くした。


「リング内の空気をほとんど止めたんや。ノムキネくんは呼吸が出来んくて苦しんちゃん?降参するなら今の内やで」


 ノムキネは絶体絶命のピンチに至っていると思われた————————


 しかし、


 忘れていないだろうか。


 ノムキネが生まれてきた時何をしたか。


 そう。


 それは————


「僕は自分の肺の中に空気を生成しているので、周りの空気を無くしても意味ないですよ」


「え?」


 気の抜けた声で、ゲンジは言葉をこぼす。


「ほんなら無敵時間ストップ・ボディ切れた僕だけが呼吸できんのか。めっちゃヤバいやん」


「そういうことになりますね」


無敵時間ストップ・ボディが切れる残り12秒の間に空気の時間を動かさないといけな———」


「その必要はないですよ」


 焦っているゲンジに言葉を被せるようにノムキネは言う。


「——もう決着は着いてますから」


 ノムキネがそう言った刹那、ゲンジは周囲を見渡す。そこには———


 無数のブラックホールがあった。

 

 ノムキネは、ゲンジが空気の時間を動かした時、その動いた空気を吸い込むためのブラックホールを無数に生成していたのだ。


「最初からこれが狙いやったっちゅう訳か...」


 ゲンジは全てを察してそう言葉をこぼす。


 そして、


「——降参や」


 ゲンジ・チョウは負けを認めて降参をした。あの状況を打破出来る策をゲンジは思いつかなかった。否、思いついてもノムキネに更にその上をいかれるだけだと悟ったからである。


 その後、


「——勝者、ノムキネ・アクト!」


 2人の高レベルな勝負を見て、リング内に大きなアナウンスと歓声、拍手が響き渡った。




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