第125話 真の変革を




ガタガタガタガタ……

カチャカチャカチャ……



「落ち着いてください……皆さん……」



光は両サイドにいる全員に言った。


今、目の前には千鶴環せんかくたまきを中心としたアダマスメンバーがいる。


光の知らないところで、皆が実際に戦い、大切な者の命を目の前で奪っていったエスパーも当然いるのだろう。


何とか落ち着いている光以外は皆、凄まじいオーラを滾らせて今にも食ってかかりそうなほど恐ろしい眼光で目の前を睨んでいる。



「てめぇら……こんなことしておいて……ただで済むと思うなよ」


カイトがいつも以上に鋭い目付きで声まで震わせている。

そんなカイトを近づけないように、京が隣で引き止めている。



「ほう?ならば具体的にはどんなふうになるんだ、我々は?」



環は余裕そうな笑みを浮かべている。



「本当は、もう分かっているんじゃないか?

お前たちにはもう、どうすることもできないんだと。

これはもう止められない革命なんだとね。」



「ふざけるな!!

お前らのせいでどれだけの人間が死んだと思ってる!どんだけ社会を破壊したと思ってんだよ!」



奏の叫びに、瑠真も口を開いた。



「お前らが残した傷跡は、たとえ今後社会が修繕されたとしても、決して消えることは無い。

そのくらいお前らは歴史に大きな傷をつけたんだ」



「それは……本望だ。

そもそもの目的が、歴史を大きく変えることだからな」



不気味に微笑む環に全員が憎悪を滾らせる。



「しかしまぁ正直こちらは驚いたんだ。

思っていたより、SPIに少しは骨のあるエスパーもいたのだとね。

多少敵に殺られたのはこちらも同じ。

ならば立場も同じだろう。我々は敵同士なのだから。」



環は、余裕そうに目の前のサイメンバーたちを見回してそう言った。

そこそこ強いと評判だったメンバーたちが、同情したくなるくらい消えていて、残りはこんなに少なくなってしまっている。

代わりにチラホラと新顔もいるし、瞳子も盗られたわけだが、まぁそんなことは想定内。


問題は……


「お前、戻っていたのか。京……」


「あぁ、まぁね。アンタのせいで荷造りも早々にほぼこの身一つで海を渡ってきたよ。

交通費と任務料は、アンタの身をもってキッチリ支払ってもらうよ」


相変わらずの余裕そうな京の笑みに、環は苛立つ。

昔からそうだ……こいつだけはいつも俺を苛立たせる……!



「で?アンタらの王はどこだよ、環」



「……今は、大事な任務に自ら赴いているんだよ」



「はぁ?」と言いつつ険しい顔をして考えだす京に、環は鼻で笑った。



「ふん……まぁ何はともあれ、我々はサイを完全に舐めていたようで悪かったな。

だからここから先は、もう少し力を入れさせてもらうよ」



「こちらも力を入れさせてもらいますよ」



突然の声に、環とアダマス一派はハッとする。


甘艸伊央里を中心としたアクシア一派がどこからともなく現れたのだ。



「兄さ……いや……亜斗里はどこです」


「なぜ貴様がそちら側に」


「先に私の質問に回答してください。」



千鶴はしばらく険しい顔をしていたが、諦めたようにフッと笑った。



「どいつもこいつも亜斗里様亜斗里様と煩わしいな。

そんなに俺じゃ不満か?」



全員の鋭い視線がまるで自分の体に突き刺さっているような不快感を感じ、ため息を吐いた。



「亜斗里様は、1番の悪源を対処しに行ったよ。

それによっては我々の状況も大きく変わるかもしれない」



「なに……?1番の悪源?どこで何をしているんです彼は」



ニヤリと笑う環。



「この世界にはいないから捜しても無駄だよ」



その言葉に、光と茂範は目を見開いた。



「この世界に真の変革をもたらすためにね」



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