エピローグ ちょっと遅めの夏の始まり
夏!海!そして空!
まさに青と砂浜のアイボリーに近い色のコントラストの下に私と結花ちゃん。そしてユミちゃんとヒカリさん(?)。
激しく照らす太陽に純白の肌を焦がされながらもキャッキャと遊ぶ女子大生たち・・・。
そんななか私は・・・さっき立てたパラソルの下で座ってました。
せっかく実家に帰省したのに・・・。
そもそも今日は結花ちゃんの命令で2人で私の実家と海に来る予定だったのだ。
「どうしてこうなったの!!」
私の叫び声を海は受け止める。なんとかなるさと言わんばかりの堂々たる様子に困惑してしまう。
「えっ?陽葵、せっかくの海だよ。楽しまないと」
「それはそうだけど・・・」
突然ユミちゃんが話しかけてくる。ユミちゃんの水着は黄緑色で私のものと同様に上下分かれているタイプのものなので胸が強調されている。
ナンパされるのではと思うほどだ。ユミちゃんの容姿も男なら釘付けだろう。なんて言ったって私だって見入ってしまいそうなのだから。
「なんか言いたいことでもあるの?」
「ないけど・・・」
全く・・・強引についてきたのはユミちゃんでしょうに。私は結花ちゃんと二人っきりを期待してましたよ!!
「ならいいよね」
ユミちゃんは圧をかけるように私の手を握る。温かくて柔らかいユミちゃんの手。そんなユミちゃんの手を振り払ったのは結花ちゃんだ。
結花ちゃんが私とおそろいの水着を着ているせいで、私のスタイルが悪く見えてしまうのではないかと不安になる。
えっ。
なんだ。この修羅場感は!
「坂井さん。陽葵は私と一緒に遊ぶのです!」
「えー。いいじゃん。ちょっとくらいわけてくれても」
「ダメです」
「まっまぁ。揉めないで・・・2人とも・・・」
『陽葵は黙ってて(ください)!』
えっ。
私のことで揉めている2人を見るとなんか申し訳なくなるのだ。ユミちゃんは私の友達で結花ちゃんは私の大切な人だから。
「えっ。はぁ。ヒカリさんもなんか言ってよ!」
「いいじゃない。微笑ましくて。まさに百合の園ね」
変なこと言わないでよ!
なんだかんだ言ってヒカリちゃんとは初対面だ。ユミちゃんに連れてってもいい?と押し切られてしまった。
海に着たもののヒカリちゃんだけショートパンツにTシャツ姿だ。海には入るつもりはないということだろう。
嫌いなわけじゃないけど一歳年上だと考えると接し方がわからなくなる。最近は人と話すことも増えて忘れていたけど、私は根っからの陰キャなのだ。
「それより『さん』付けはやめてほしいわ。陽葵はユミの友達なら実質友達だわ」
友達の友達は友達か・・・。陽キャな台詞だ。私なんかは知らない人と話すのが苦手でしょうがないのだ。
「そっ、そうかな」
「うん。そうだわ」
「ヒカリちゃん・・・」
「いいわね」
ヒカリちゃんはふふんと誇らしげに笑った。
いいわねってなに!?私に名前呼ばせて楽しんでるでしょ!私の周りに普通な人はいないの!?
「陽葵。私とお話するのはどうかしら?」
「えっ。ヒカリちゃん。急にどうしたの?」
「いいじゃない。ユミと吉河さんはあっちで楽しそうにやってるんだから・・寂しいじゃない」
遠くを見ると結花ちゃんとユミちゃんが水をかけあって遊んでいる(?)いやあれは揉めてるの間違いでしょ・・。
「まぁ・・ちょっとだけなら・・・」
「そうね・・・じゃあ、陽葵は吉河さんと付き合ってるの?」
えっ。付き合ってるって私と結花ちゃんと結花ちゃんのお父さんしか知らないはずだよ!!
「なっ・・なんで?」
「うん。なんとなくね」
ヒカリちゃんは菫色の髪を揺らす。分かってましたよと言うように自信がありそうな様子だ。
「ねぇ。女の子同士で付き合うってどうなのかな?」
私は今後が不安なのだ。もしかしたらみんなが離れていってしまうかもしれないと。
「何も心配することはないわよ。好きな人のことくらい誇らしく思いなさい」
「うん。それは大丈夫だよ」
まるでヒカリちゃんには過去に何かあったんだろうと思わせるような言い方だ。
「それなら良かったわ」
ヒカリちゃんは胸を撫で下ろした。きっと優しさからだろう。ヒカリちゃんとも友達になれそうだ。
「だって私はユミのことが好きなんだわ」
えっ。私が結花ちゃんと付き合ってることの何がユミちゃんに関係あるの!?
「えっ。それはどういう?」
もしヒカリちゃんがユミちゃんのことが好きなら応援したい。でもユミちゃんには彼氏が居たはずだ。
「私はユミのことが好きだってことで、ユミはあなたのことが好きだから」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇっ」
なんでよ!?そんな素振りなんて・・・いや・・あったことにはあったかもだけど。
「わかりやすく動揺してるわね」
私が鈍感だというのはどうやらホントらしい。私の知らないところでこんなに世界が動いていたなんて。
「それはそうでしょ!でもユミちゃん彼氏いるって言ってたけど・・・」
「あー、それは嘘よ」
「なんでよ!」
嘘かい!いつもの惚気話も全部嘘なの!?
ユミちゃんが私のことを・・・?
ありえないと否定したいけど、否定するには心当たりが多すぎる気がするのだ。
ユミちゃんが・・・。
「どうしてこうなったの!!」
太平洋は私の心の叫びを聞き流す。何事もなかったかのようにただ波が砂浜に打ち付ける。
遠くを見るとユミちゃんと結花ちゃんが怒りをぶつけるように水をかけあっている姿が見える。露出の多い水着姿に真っ白な肌は遠目で見てもドキドキしてしまう。
「陽葵はどうするのかしら?」
そして始まるのが新たな波乱。今日も明日も私には休む暇がないようだ。
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