第27話 陽葵のことが好きなのです!!
※吉河結花視点です
いま、私は陽葵とうどんをすすっています。
会話が弾んでしまったせいかあったかかったカレーうどんは冷めてしまっていますが陽葵と食べてるだけで幸せな気分になります。
それに私たちが食事をしているのは夏の外なので冷めていたほうが都合がいいのです。
「そういえば話すのは久しぶりですよね・・・」
私は陽葵との会話がどこか懐かしいように感じたのです。
「いやいや。結花ちゃんが避けてたでしょ!!」
「確かにそうですね。申し訳ないです」
そういえば私は陽葵を避けてしまいました。バッティングセンターの帰り陽葵に声を荒げてしまったからです。
その時は私が陽葵が好きで好きでたまらなかったのです。もちろん今もですケド。陽葵と一緒に居たくてアメリカ留学に行きたくなかったので陽葵の「結花ちゃんには結花ちゃんの人生が・・」という言葉に苛立ってしまいました。
それで私は思ったのです。私は思ったより陽葵に好かれていないのではと。
今考えるとそれは杞憂だったと思います。でも陽葵が私にことを嫌うはずなんてないと分かっていたのに疑い始めたらキリがなくなってしまった。だから私は陽葵と顔を合わせたくなくなってしまったのです。
陽葵と会う前にアメリカに飛び立ってしまいたいと何度思ったことでしょう。
それでも・・・私はあんなにひどいことを陽葵にしたのに陽葵は話しかけてくれました。
少し困惑して避けてしまいましたけどそれが嬉しくてたまらなかったのです。もし私がアメリカ留学をしなければ前までの日常に戻れるのかなとも考えてしまいました。
そんなことを数日続けていたら陽葵は泣き出してしまいました。
陽葵の瞳からこぼれ落ちる大粒の涙は教室の床に垂れ私はそれを見て居ても立ってもいられなかったのです。いま考えると陽葵を泣かしたのは私なのですけどその時は申し訳ないという気持ちよりもどこか愛おしさみたいなのもあった気がします。
いつもの陽葵からは想像もつかない顔は他の人から見たら恥ずかしいものととらえるかもしれませんがその時、私は陽葵も人間なんだなと思いました。いつも私の言うことを何でも聞いてくれて優しかった陽葵が何倍も可愛く見えました。
だから陽葵に「好きだよ」と言われたときは心が跳ね上がってしまったのです。陽葵にとってそれは恋愛的な意味を持たなくても私がアメリカ留学を辞める理由には充分なのです。
そもそも陽葵からの命令ですからね。私には断れないです。
そしてなんとかお父様を説得して日本に残りたいと決意した瞬間でもあります。
こんな事があっていま陽葵とご飯を一緒に取っているのです。
「ねぇ結花ちゃん。お父さんを説得するってできるの?」
「そうですね・・・。なんとかしますよ」
「えっ。不安なんだけど・・・」
「陽葵には心配をかけませんよ。お父様が留学しろって言ったわけが分かればなんとかなるはずです」
「そっか・・・」
陽葵は・・・納得してなさそうですね。
私のお父様、吉河大樹は合理主義者です。その決断にもなにか理由があるのは間違いないと思っていますが現状、お父様と話す以外に選択肢がない気がします。
でもこんな話をしていると陽葵は私が留学することが嫌なんだなということがはっきり伝わってきます。
「陽葵!そういえば海水浴、いつ行きますか?」
「うーん。そうだね・・。私は基本的にいつでも空いてるよ」
陽葵は朔とずっといるのも嫌だしと付け足しました。個人的には朔くんは格好良くていい男性なんだなと思います。そもそも私は同性愛者なので恋愛感情は抱きませんが。
「そうですか。じゃあ8月の一番初めの土曜日でどうですか?」
「うん。いいよ」
私たちの大学は8月から夏休みです。学部によっては7月後半から夏休みのところもありますが・・・。
買い物等もあると思うので時間に余裕があるようにしました。
・・・買い物・・・。
陽葵と買い物なんて行けたら絶対に最高じゃないですか!
「陽葵!!一緒に水着買いに行きましょう!!」
「えっ。あっそっか水着ね・・」
海の水着は醍醐味です。私は海を見たことしかありませんが水着を着て遊ぶことに憧れがあったのです。
私の水着姿で陽葵を虜にしちゃいます!!・・・そう考えると恥ずかしいですね。
というか陽葵はどの水着も似合いそうです。
「明後日にショッピングセンターにいきましょう!!」
「別に・・・いいけど」
ふふん。なんだか楽しみになってきましたね。
すっかり冷めてしまった最後の一口のうどんを食べます。陽葵はとっくに食べ終わっているようです。あーんしてもらいたかったなと思いますけど今回は諦めるしかなさそうです。
陽葵が左手に着けている腕時計をちらっと見ると14時近くになっていた。
「じゃあ。私はここで。少し寄るところがありますので・・・」
こうなった以上はお父様をいち早く説得しなければいけないのです。この前は逃げ出してしまいましたが今回はしっかりと自分の意思を伝えたいと思います。
「えっ。結花ちゃん講義は!?」
「今日の午後はサボります!」
えっ、と戸惑う陽葵を尻目に私はそれだけ言い残して食器を片付けお父様の元へ向かいました。
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