第13話 お泊まり会は大波乱!? 〜陽葵と結花の場合〜
夕食後、リビングのソファで結花ちゃんと談笑していたとき。
結花ちゃんはどこで寝ればいいんだろう・・・。
うちには私が普段使っているベッドと朔が使っているものの2つしかない。朔のベッドを結花ちゃんに使ってもらう訳にもいかないので私のベッドで結花ちゃんに寝てもらう。そして私はソファで寝るのが一番だろう。
「結花ちゃんは私のベッドで寝てよ。」
「陽葵はどこで寝るのですか?」
「リビングのソファで寝るよ。」
「それは申し訳ないです!」
「そうは言っても結花ちゃんはお客さんだしソファで寝せることなんてできないよ!」
「陽葵がソファで寝るのは嫌です。私は陽葵に泊まらせてもらっている立場なので」
え。でも他に方法がないじゃん・・・。
「あっ、じゃあ一緒のベッドで寝るのはどうですか?」
えっ。えぇぇぇぇぇぇ。
いやいや、さすがにそれはないでしょ!
「いっ、いやさすがに友達同士でもそれは・・・。」
「いいじゃないですか!ねっ朔くん?」
「別にいいんじゃないっすか。」
えっ。朔・・・。なんで朔は毎回、結花ちゃんの味方なの!
まさか・・・。買収とかされてる!?
いやいや。さすがにそれはないけど。ねっ?って言われたら確かに否定しにくいかもだけど。
「いやいや。私はソファで寝るから。」
これだけは譲れない。さすがに友達同士でも一緒のベッドで寝るのは違うと思う。隠れた一線を超えてしまうようなそんな気がした。一緒に寝るということは密着するわけで・・そんなことをしたら寝れる気がしない。
「じゃあ私もソファで寝ます。」
「えっ。」
それじゃ私がソファで寝る意味ないじゃん!
「私は陽葵の隣で寝たいです。」
「でっ。でもやっぱり結花ちゃんは私のベッドで寝てよ。二人で寝たら少し暑いよ。」
梅雨は明け夏に差し掛かった今日の季節。流石に二人で寝たら暑くて汗だくになってしまうだろう。
「そうですか・・・。陽葵がそう言うならそれでいいです。」
ん?なんか結花ちゃん怒ってない?
別に私は結花ちゃんと寝たくないわけじゃないよ。でも一緒に寝るのはなんか問題があるっていうか、なんというか。くっついてたら寝れないと言うか。
「ごっ、ごめんね・・・。」
なんとなく謝った。
「じゃあ、ベッドお借りしますね。」
諸々終わらせると結花ちゃんはそう言うと私の部屋のドアノブを掴む。
「うん。なにかあったら言ってね。」
「はい。わかりました。」
「うん。」
「あの・・。今日はありがとうございます。」
結花ちゃんはペコリと頭を下げる。
「大丈夫だよ。結花ちゃんこの前来たいって言ってたし。」
「はい。家での陽葵も見れて良かったです。」
「えっ。私って家と外で正確違う?」
友人を家に招くのなんて初めてだ。だから家と外の違いを指摘されるのももちろん初めただ。自分では違いはない方だと思っていた。
「いえ。そういうわけじゃないですけど・・・。なんか新鮮でした。」
「そっか。じゃあおやすみ。」
「はい。陽葵もゆっくり休んでくださいね。」
「うん。」
そう言って結花ちゃんは私の部屋に入っていった。
「やっぱり陽葵は優しいです。」
吉河結花は陽葵から借りたベッドで幸せに浸っていた。大好きな陽葵の優しい香りに包まれる感覚は不思議なもので宙に浮いているように感じられた。
「お父様は怒っていますよね。」
「いくらお父様の言うことでもそれは聞きたくありません!」
あんなに誰かに感情を向けたのは初めてのことだった。いつもはどんなに嫌な感情も押し殺してできるだけ誰かを傷つけるなんてことはしないようにしていたのに。
気づけばさっきまで心を占めていた悩みは晴れてきた。だけどどこか物足りなく感じるのはきっと陽葵のせいでもある。
「陽葵と一緒に寝られると思ったのですが・・・。」
一度期待してしまったらもう戻れない。なぜか陽葵なら許してくれるのではという考えが頭をよぎってしまった。なんて考えても得られないものは得られない。もう陽葵は寝てしまっているだろう。
「陽葵に甘えるのは明日にしましょう!」
いつしか陽葵が当たり前の存在になっていた。
大学に行けば必ず陽葵を無意識のうちに探してしまうし見つけたときに心が跳ね上がるのも気がついていた。
「やっぱり私は陽葵が好きです!」
ー強いて言うなら攻めだね。ー
坂井さんはそう言っていた。
誰かに想いを寄せたのは初めてだ。これまで幾度となく想いを伝えられその度に断ってきた。だから陽葵にどう接して良いのかわからない。ただ陽葵に好かれたいと思っているだけなのにどうしたらいいのかわからなってしまう。
気がつくと私は布団の中から出ていた。そしてドアを音を立てないように開けるとリビングのソファでは陽葵のすやすやと眠っていた。
そこにゆっくり近づくと陽葵はやや暑いのか半分ほどお腹を出している。
私は攻めますよ。坂井さん。
「だらしないですね。」
床に落ちたブランケットを陽葵にかけると気持ちよさそうな寝息が続いている。
「ちょっとだけ・・・。です。」
もはや我慢の限界だった。眼の前の無防備な陽葵を見ると愛しさが込み上げてた。
私はソファの端に横になる。そうすると陽葵の顔が目の前にあって思わすドキッとしてしまう。陽葵の顔にかかった桃色の一束の髪を掬い耳に掛ける。純白の色をした陽葵の頬を撫でると体温がはっきりと伝わってくる。
「ずっとここに居たいです。」
この温もりの味を忘れないようにそっとソファで目を閉じる結花だった。
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