第12話 お泊まり会は大波乱!? 〜夕食は結花ちゃんと共に〜
「結花ちゃん大丈夫だった?」
お風呂から出た私は結花ちゃんに体調を尋ねる。さっきお風呂でのぼせたように見えたからだ。
「はい。ちょっと長湯しすぎちゃったかもしれませんが休んだので大丈夫です」
結花ちゃんはリビングのソファに座っていて顔色もすっかり良くなったように見える。
「そうなんだ。それは良かった。ちなみに服は大丈夫そう?」
「はい。問題ないです。あっ、でも、なんであの下着に?」
結花ちゃんに合うサイズの下着を私が持っていなかったので昔訳あってユミちゃんから貰ったちょっと露出の多い下着を結花ちゃんに着てもらったのだ。
「あっ、それは色々あってね・・・。きっ、気にしないでくれると・・・。」
「分かりました。陽葵はこういうの着るんですね。」
ちっ、違うから私はそんな露出の多い下着を着る趣味なんてないから!
というか私には大きすぎるから!
「全然違うから!昔色々あってね・・・」
「そうなんですか!陽葵の昔話、聞きたいです!」
「そういうのじゃないんだけど・・・」
「それでも、です。」
結花ちゃんが引き下がりそうにないので私が下着を貰った経緯を話した。
結花ちゃんも晩ごはんをまだ済ませていないので、一緒に食べることになった。
「陽葵が料理するのですか?」
「うっ、うん。まあね」
私だっていつも料理をしているので料理することに関しては一切問題がない。
ただ。
・・・。
ただ。何を作ればいいか分からないよ!!
結花ちゃんって普段何食べて生きてるの!?結花ちゃんは大学ではTheお嬢様って感じだしやっぱりちゃんとしたものなのかな・・・。
「ちなみに結花ちゃん、なにか食べたいのある?」
結局聞くのが一番だよね。
「特にないです。陽葵が作ってくれた料理ならなんでも嬉しいですよ」
そっ、そっかー。じゃないよ!
何作ろうか、せめてヒントだけでも欲しいよ!
「じゃあ結花ちゃん、好きな食べ物はある?」
食べたい物がないなら好きな物を作っちゃおうということだ。そもそも友人に料理を振る舞ったことなんて皆無なのでこういうときに何を作っていいかなんて全くわからない。
「好きな食べ物ですか・・・。特にないですね。嫌いなものも特にないので安心して下さい!」
えっ。じゃあ、なにを作ればいいの!?
一番楽なのはインスタント麺だ。うちで出す回数が最も多いと言える。だけどお客さんにそれを出すのは違う気がする。なんというかおもてなしが足りないような。
まあそんなに食材があるわけじゃないけどできる限り結花ちゃんの好みに合わせたい。
あっ。
「じっ、じゃあ炒飯はどう?」
炒飯は私の得意料理だ。中学校のときの調理実習で作って以来家で頻繁に作っていた。手軽に作れて美味しいからね。
「いいですね。最近食べてなかったので嬉しいです」
「そっか。じゃあ作っちゃうね。」
「はい。私も手伝います。料理は・・・、あまりしたことないですけどできるだけ頑張ります!」
「うん。お願いね」
炒飯を作るのは何事もなく終わった。結花ちゃんが手伝ってくれたおかげでいつもよりも早く作ることができた。
「じゃあ。食べよう!」
夕食はもちろん朔も一緒だ。私の隣に結花ちゃん、目の前に朔が座っている。朔はさっき地雷を踏んだからね。結花ちゃんと距離をとっておいたほうがいいだろう。
「そうですね。いただきます」
「いっ、いただきます」
大丈夫か朔!なんでこんなに顔が赤いの!えーまさか緊張してるの?もう、朔ったら普段はモテてる雰囲気を出しておいてこんなものですか!?
「美味しいです!ちょっとネギの大きさがまばらですけど大丈夫ですよね!朔くん?」
結花ちゃんにはネギを切ってもらった。料理するのはほとんど初めてらしくネギを均等に切れていない。というかくっついてる・・・。
苦闘してる結花ちゃんも新鮮で可愛かったな・・・。
「えっ、大丈夫・・・だと思います」
「だそうですよ!陽葵も食べてみて下さい!」
なんかやっぱり仲良くなったよね!?なにがあったんだろう・・・。
「うっ、うん」
炒飯をすくって口に放り込むといつもの味付けが口いっぱいに広がる。ふぞろいのネギもほとんど気にならない。
「美味しいよ!結花ちゃん!」
「そうですね。やっぱり陽葵は料理が上手いですね。」
「最近始めたばっかだよ。それに結花ちゃんが手伝ってくれたからだよ。」
私はいま大学2年生で朔は高校1年生だ。だから大学1年生のときは一人暮らしだった。朔の進学する高校が東京で朔と二人で暮らすとわかった瞬間から急いで料理の練習を始めた記憶がある。
「それはありがとうございます。まあ私はほぼなにもしてないですけどね」
誰かと料理をしたのは初めてだ。だから少し不安だった。結花ちゃんになにを手伝ってもらうかひとつひとつ悩んだつもりだ。でもなんだかんだ言ってすごく楽しかった気がする。
「料理って楽しいですね。私も今度家で練習します!」
「いいね。また一緒に料理しようね」
「はい。今度は私の料理を食べて下さい。」
「うん。楽しみにしてるね」
チャーハンは電球の光を浴びて輝いているように見える。
私はレンゲでチャーハンを掬って頬張った。
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