第11話 お泊まり会は大波乱!? 〜お風呂に入っただけなのに〜
「はっ、入るよ・・・」
「はい。どうぞ」
結花ちゃんの優しい声は浴室の中で反響する。
お風呂のドアをゆっくり開けると立ち込めた湯気の熱気が私の
結花ちゃんの方をちらっと覗くと純白の肌の大部分が見える。
どうしてこんなことに・・・。
〜数十分前〜
「はい。拭き終わったよ。結花ちゃん」
タオルを置き結花ちゃんの髪を触って水分が残ってないことを確認する。
「ありがとうございます」
「あと、お風呂沸かしてあるから入ってよ」
さっき掃除をしたときにもちろん浴室の掃除もした。雨が降っているから寒いだろうとお湯を張っておいたがまさか結花ちゃんがびしょ濡れで来るとは思わなかった。
お風呂沸かしておいて正解だったね。
「はい。あの・・・」
結花ちゃんはなにか言いたいことがありそうにもじもじしている。
「どうしたの?」
「着替え貸してもらってもいいですか?スマホ以外なにも持ってきてなくて・・」
「うっ、うん。いいよ。じゃあ先お風呂入っててよ。着替え置いておくから。」
「はい。ありがとうございます。」
着替え、か・・・。結花ちゃんのサイズの服なんてあるかな。
結花ちゃんがお風呂に入ると私の結花ちゃんの服探しが始まった。問題は結花ちゃんのサイズに合う服を私が持っているかどうか。結花ちゃんの身長は私より5センチほど低い。私の服の中でできるだけ小さいのを選んだとしてもぶかぶかだろう。
まあ上はスウェットで下はパジャマパンツかな・・・。
どっちもちょっとサイズが大きい状態で着ても問題なさそうなやつだ。
あとは、下着か・・・。
とにかく問題はブラよ!!
胸の大きさは結花ちゃんのほうが大きい・・・。
私のブラじゃ絶対に収まらないよ!!
さすが二つ名が美少女の結花ちゃん。
ラブコメのヒロインみたいに胸が大きいけど小柄なんだよな・・・。
あっ。
結花ちゃんにぴったりな下着、うちにあったかも。
ないすユミちゃん!!!
それは私の19歳の誕生日のこと。(いまから11ヶ月ほど前)
「ひまりー。誕プレなに欲しい?」
昼食を取ってるときにぼそっとユミちゃんがつぶやいた。
「えっ。くれるの?」
「うん。あげるよ。欲しい物ないっぽいし勝手に選んじゃうね」
「あっ、ありがとう・・。ユミちゃん」
「まっ、私の誕生日には誕プレちょうだいね」
そのときは私が大学に入学してユミちゃんと出会ってからまだ4ヶ月しか経っていなかった。誕生日プレゼントなんて両親と祖父母からしかもらったことがなかったのでもらえると聞いて少し嬉しかった。
そしてしばらくして渡されたのがこの上下の下着セット。
流石に露出多すぎない・・・。大人の下着感よ。
特にブラ。私の胸より二回りくらいサイズが大きいんですけど。
そして私はユミちゃんに言った。
「なっ。なんでこれなの?しかもサイズ全然違うし・・・」
「着けてみたら?」
「着けられるわけないじゃん!!」
「ちなみにその下にはちゃんとしたプレゼントが入ってるから。それに使うかもよ」
渡された紙袋の奥の方をみると透明な小瓶に入った香水があった。この香水はなにか大事なときにつけてたりする。(結花ちゃんとの出会いのときもね。)
その下着はタンスの奥にしまってある。ユミちゃんがこれをくれた意図は全くわからないけどなんだかんだ大切にとってあった。
その下着をついに使う時が来た!!
私はまだ使ったことない(ていうか使えんのか?)けど結花ちゃんが使ってくれるならこの下着も喜んでくれるだろう。
もう二度と開封することはないと思っていた袋を開ける。
思ったより露出多いな・・・。着けても着けなくても変わらないくらいだよ。これ。
まあないよりはいっか。
「結花ちゃん着替え置いとくね!!」
「ありがとうございます。」
脱衣所から浴室の結花ちゃんに扉越しに話しかけるといつもの声が返ってくる。
「陽葵も入っていいですよ。」
「いっ、いや。別でいいよ。」
流石に友達でも一緒に入らないでしょ!!
「そうですか。友達同士で入ったりすると聞いたもので・・・」
「えっ、そうなの!」
「朔くんはお友達同士でお風呂に入ると思いますか?」
お風呂にいる結花ちゃんがリビングの朔に聞く。
いつの間に仲良くなったんだ・・・。
「まぁ。入るんじゃないの」
朔。タメ口!?
どこで仲良くなったんだよ。ほんとに。ってかさっき結花ちゃん朔にキレてなかった?
人間関係って難しいな・・・。
「ですってよ。陽葵!入りましょう!」
えっ。えぇぇぇぇぇ。朔まで結花ちゃんの味方に!?
「そこまで言うなら・・・」
なんなのこの状況!?朔と結花ちゃんってグルだったの!?
結局断り切れずに一緒に入る事になってしまった。だれかとお風呂に入るのなんて修学旅行ぶりだ。しかも今回はうちの狭いお風呂。
「はっ、入るよ・・・」
「はい。どうぞ」
ドアを開けると湯気が私を包む。そして右手側の浴槽には真っ白な肢体の結花ちゃんがいる。それを見ると嫌でもドキドキしてしまう。
私はお風呂にあるバスチェアに腰を下ろす。
結花ちゃんスタイルいいな・・・。
私の体格は中肉中背。結花ちゃんは身長が低く小柄であるが体のバランスは整っていて羨ましい。
「陽葵の肌は綺麗ですね。」
結花ちゃんは私の体を上から下まで眺めるとそう言った。
なっ、なんか恥ずかしいな・・・。
「そっ、そうかな。結花ちゃんこそスタイル良くて羨ましいよ」
「私が身長低いの気にしてるのしっててスタイル良いって言ってますか?」
結花ちゃんは身長が低いと思われるのが嫌なようだ。少なくとも好意的に寄せられた美少女という言葉に反応してしまうほど。(幼女なんてもってのほかだ)
「そういうんじゃなくて。手足が細くていいってことだよ」
「そうですか。ありがとうございます。陽葵は肌の手入れってどうしてます?」
「えっ、わたし?」
「はい。陽葵は肌が綺麗ですから、なにか秘訣があるのかと思いまして」
「別に特になにかしてるんじゃないよ。お風呂上がりに化粧水と乳液を使ってるだけだよ。」
「そうなんですか。あとでどんなの使ってるか見せてください。」
「いいよ。」
「ついでに塗り合いましょう!!」
塗り合いましょうってなに!パワーワードすぎじゃない!?体を触られるなんて恥ずかしいよ!
なんとか話を逸らさないと・・・。
褒められてばっかで気が参りそうだ。(褒められ慣れてない。)
「ちなみに結花ちゃんは髪どう手入れしてるの?」
結花ちゃんのチャーミングポイントはスタイルだけじゃない。それは髪!!
サラッと伸びた真っ黒い長髪は大学のみんなの憧れだ。
「かみ・・・ですか?」
「うん。結花ちゃん髪、綺麗だからどう手入れしてるのかなって思って」
「そうですか。たぶん普通だと思います。ブラシで髪の汚れをとってゆっくり濡らしていって軽く汚れを落としてからシャンプーしてしっかり洗い流したらトリートメントを使ってます。どちらかの言えば乾かすほうが時間がかかりますよ」
「そっ、そうなんだ」
結花ちゃんの髪は長い。だから時間がかかってるんだろうなと推測はできたもののここまでなのは予想外だ。
私は髪の手入れにはそこまで時間をかけていないというか面倒なので諸々すっ飛ばしてる。
そういうところなんだろうな。私がモテないのは。
「ところで陽葵。湯船に浸かって下さい」
実を言うと私はさっきっから体を洗い終わっていた。一緒に入るのはおかしいと思って結花ちゃんが出るのを待っていたのだが・・・。
結花ちゃんはバスタブの片方に寄って私が入る場所を作ってくれる。
えっ・・・。一緒に浸かるの?いやいや。友達同士でもさすがに・・・ないよね?
「・・・。」
「どうしましたか?入っていいですよ」
「とっ、友達同士で、こういうことってするのかな?」
「分かりません。でも私は陽葵と一緒に湯船に浸かりたいです」
えっ・・・。ストレートすぎ。
「じ、じゃあ、入ろうかな・・・。」
「はい!どうぞ。」
久しぶりのストレートに要求を言ってくる通称ド直球結花ちゃん(いま名付けた)が発動したので仕方なく入ることにする。ストレートに言われると断れない自分の性格をどうにかしたいと思うがまあこれくらいなら・・・と毎回受け入れてしまう。
ちょんと足先で水面に触れるとほのかな温かさが体中に染み渡る。その温かさに身を任せるようにそっと脚を入れると自然と体全体もそれに続いていく。
狭いお風呂では結花ちゃんの肌に手で触れてしまう。結花ちゃんの脚は柔らかくてそしてすべすべしている。
「脚触られると・・・ちょっと恥ずかしいです」
「あっ。ごめんね・・」
勘違いしないでほしいが私だって触りたくて触ったわけじゃないのだ。
そんなことを考えていると結花ちゃんの手がゆっくりと私の太ももに近づいてくる。
「ちょっと・・結花ちゃん!」
「陽葵も触ったんですから、お互い様です!」
「ちょ・・・」
結花ちゃんの手が私の太ももに到達する。結花ちゃんは私の太ももをなぞり、私はピクッとする。顔が熱くなるような変な感覚だ。
結花ちゃんは指は太ももの上部にまでのびてくる。ここまで来ると、跳ねる心が限界に達していた。
「ちょっと・・触りすぎだよ・・・結花ちゃん」
「あっ。ごめんなさい。
「そこまで気にしなくてもいいけど・・・」
そして少しの間沈黙が走る。
「温かいね。」
「そうですよね。」
お風呂の魔力とでも言えるだろうか。この温かさが体中に染み渡る。悩みなんて消えてしまいそうなほどに。
あっ、そう言えば結花ちゃんはなんでいきなりうちに来たんだろう。しかもなんで濡れてまで。
「ねぇ。結花ちゃん。なんで今日はいきなりうちに来たの?」
「そっ、それは。急に泊まりたいなんて言って申し訳ないです。」
「あっ、別に嫌だったわけじゃないよ。単純に気になっただけだよ。」
「そうですか。ありがとうございます。」
「もちろん答えられる範囲でいいよ。相談したら楽になることもあるから。」
「実は親と少々モメてしまって。こんなことになったのは初めてでどうしていいかわからなくなってしまいました。」
「そうなんだ・・・。」
思ったよりシリアスな悩みだった!?
大学生に干渉してくる親も居るんだな・・・。
私と朔の両親はどちらかというと寬容な方だ。進路に関しても自分の意見を尊重してくれたしたぶん結婚だってこの人としたいと言えば許してくれるだろう。
「あっ、でもそんなに深刻ではないですよ。」
「そうなの?」
「はい。ちょっとしたことでモメてるだけなので。気にしないで下さい。兄は私の味方でいてくれるって言ってましたし。」
「えっ。お兄ちゃんいるの!?」
「はい。たぶん陽葵も知ってますよ・・・。」
「えっ。誰?」
「吉河祐樹です。」
「あっ・・・。あの人ね。」
吉河祐樹とは結花ちゃんがマッチングアプリで使っていた名前だ。まさか名前を兄から持ってくるなんて。
「陽葵は夢とかありますか?」
「えっ、なに?突然。」
「ちょっと気になったので。」
「うーん。私の夢か。特にはないかな」
私に夢なんてない。私はぼーっと生きてきただけなのだ。勉強だってなんとなくしていたし部活だって・・・。
「そうですか・・・」
「結花ちゃんはなんかあるの?」
「私もないので一緒に見つけましょうね」
「そうだね。ありがと」
チラッと結花ちゃんの方を見るとやや頬が赤く染まってる。そんな結花ちゃんのほうに自然と手が動く。
いや、なにしてんだ私。
「どうしたの結花ちゃん、のぼせちゃった?」
「いえ大丈夫です。じゃあ私はお風呂から出ますね。」
「うん。わかった。私はもう少し浸かってから出るね。」
「はい。わかりました。」
結花ちゃんはそう言うと軽く体を拭き脱衣所にでる。
抱きしめようとしちゃった・・・。危ない。さっき結花ちゃんの顔が赤くなったときの話だ。結花ちゃんとは友達だから抱きしめるのはどこか一線を超えてしまう気がする。私はそっと空気を掴みため息を吐く。
ふぅ。
私はそっとお風呂のお湯を肩にかけた。
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