第110話 何でそんなことせなアカンの?

「じゃあ何やねん。言えや」


 大阪王は立ち上がり。天守閣の窓辺に座り直した。


 外の様子はまだ日が高い。

 陽光が差し込んでくる。


 その顔は別に不愉快そうでも何でもなく。

 言ってみ? という表情だ。


 そのせいだからか。

 谷町さんはそのまま自分の要求を述べた。


「この地獄の大阪をもっとまともな世界にして下さい」




「まともな世界なぁ……具体的には?」


 大阪王は真顔だ。

 要求の意味が理解できないから説明しろという表情かお


「危険すぎる大阪生物たちを消して欲しいです」


 天王寺さん。


「邪悪な人間が大阪スキルを手にして、好き勝手に暴れています! 何とかなりませんか!?」


 なっちゃん。


 なっちゃんの要求が一番重要だな。

 この地獄の大阪の治安が最悪なの、大阪スキル使いが原因だし。


 人身売買組織も、性質たちの悪い性風俗が無くならないのもそのせい。

 トップに強力な大阪スキル使いが居る。

 そのせいで、警察に該当する組織が作れないんだ。


 為政者側が最強の暴力を持ってないって、ホントに不幸なことなんだ。

 それを思い知らされてしまう構図だった。


 例えば、臓器売買組織「モギトリパーツ」のトップには……


 五体衆という、人体を称号名にしている大阪スキル使いがいる。


 頭脳の「福島」

 両腕の「野田」

 両脚の「九条」

 胴体の「弁天」

 神魂の「芦原」


 リーダーの芦原を中心にして、臓器販売の組織を運営してる。

 どういう大阪スキルを持ってるのかは分からない。

 まあ、当たり前だけど。(その内容がバレるのは死活問題だしな。大阪スキルの戦闘者としては)


 他にもいっぱいだ。

 この地獄の大阪の犯罪組織。

 トップにいるのは例外なく、大阪スキル使い。


 これが問題なんだよ。


 大阪スキルを持たざる人には対抗できないような超能力を持ってる怪人が、犯罪組織を運営できてしまう、ってのが。


 だからできれば……


「邪悪な人間に大阪スキルを与えるのをやめてくれませんか?」


 ……ひょっとしたら大阪王の責任じゃないかもしれないけど。

 俺は踏み込んで発言した。


 最初の要求は大きく出た方が良いからな。


 すると


「……結論から言うと、無理やな」


 大阪王。

 その顔色は別に変じゃ無く。


 真顔。


 淡々と、俺たちの要求に対して返答した。


「まず大阪生物やけど……作ったのはワシやないし、制御も不能や。フラックだけが例外的に『大阪四天王を襲わない』という本能を持っとるけど、それぐらいや」


 フラックって、そういう大阪生物だったのか。

 知らなかった。


 そして続けて


「で、大阪スキルを与える人間の選別やが……これも無理。というか……」


 その後に続く言葉。これに俺たちは


「ワシ、する気無いわ。何でそんなことをせなアカンの?」


 ……憤慨した。

 大阪王は、お前らメチャクチャ言うな、という迷惑そうな顔をしていたけれど。




「大阪スキル使いの極悪人がいるせいで、どれだけの悲劇が起きてるか知らないんですか!?」


「というか、やっぱり与える大阪スキルの選別、あなたがしてるんですね!?」


「大阪スキルを持たない人がどれだけ苦しんでいるか知らないんですか!?」


「こんな酷い世界に子供に生きろと言うのか!? ふざけるな!」


 ……口々に、大阪王に食って掛かった。

 相手がこの世界の神様に近い存在であるということを一瞬、忘れる。


 そのぐらい激高した。


 だけど……


「お前ら、落ち着け」


 ウンザリしたように大阪王。

 彼は続けた。


「面倒やからイチから説明したる。よぉ聞けよ?」


 ……その声音に。

 激高した俺たちは落ち着きを取り戻す。


 大阪王は語り出した。

 大阪スキルに纏わることと……この世界の成り立ちについて。

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