第99話 母乳喫茶にて
中央区の売春窟。
俺たちはそこに入り込んでいた。
……普通に倒れて死んでいる人もいるし、ここらへんはガリガリにやせ細った女性の全裸死体が転がっていたりする。
俺たちの店の周辺では、男の死体ばっかだったけど、ここらへんはあるんだよね。女の死体。
ひでえよな。
多分、この近辺の売春宿で働かされていて、病気になったか何かで商品価値が無くなったので、衣服を剥がれて捨てられたんだな。
それ以外ない。
「……私たちが住んでるあたり、中央区でもまだマシなところだったんですね」
なっちゃんが若干引きつつそう言った。
だな。
終わってるよ。マジで。
ゴミだらけの汚い路地。
道は汚いんだけど、こんなところで店を構えている性風俗の店の看板のネオンだけは綺麗にされててド派手。
それが、なんか下品だった。
で、目的地を目指して歩いていたら。
「あ、自動販売機がある!」
なっちゃんがそんなことを言ったので、マジか!? と俺は見た。
こんなに終わってる環境で自動販売機っておかしくない?
潰されるだろ!?
……と、思ったら。
本当にあった。
金属製の直方体の機械。
……なので。
どうしても気になったので、俺はその自動販売機に近づいた。
何を売ってるんだ!?
酒か?
それとも、煙草か?
すると
『安い! どれでも100円!』
エンジェルダスト、マッスルドリンゴ、ヘルズクーポン……
「全部麻薬じゃねーか!」
思わず叫ぶ。
麻薬を売る自動販売機がある地域。
どんだけ終わってんだよ、ここ。
母乳喫茶「
……来た。
看板はネオンで彩られていて、オブジェで蛇や百足の細工があしらわれている。
ここだ。
だいぶ歩いたし、途中輩に絡まれそうになったけど。
なんとか無事に着いた。
「……入るよ。気を散らさないで」
谷町さんが俺たちにそう一言入れる。
俺たちは頷いた。
地獄の門をイメージできるようなデザインの入口。
そこにサングラス黒スーツの門番の男が2人いて
「会員証を」
そんなことを言われた。
会員証、要るのか。
どうすればいいのか。
焦る俺。
谷町さんを見る。
……焦ってるように見えないけど、流石に分かる。
もうだいぶ組んで動いて長いしな。
……単に落ち着いているだけだ。
具体的な手があるわけじゃない。
天王寺さんは……
人間を操るにはアナルか膣を犯さないといけないから、さすがに大ごとだ。
潜入には向かない。
どうすれば良いんだマジで……
悩む。
俺の大阪スキルは戦闘用で応用が利かないからな……
そのときだった。
「ケンタさん」
ボソボソと、なっちゃんが囁いて来たんだ。
そこで気づく。
そうだよ……
こういう所謂違法行為に強いのが、なっちゃんの引き継いだ大阪スキル「大阪犯罪」じゃないか!
「……私、会員証を偽造することができますよ?」
予想通りの内容。
それに俺はこっそりと頷く。
助かった!
ありがとう木津川さん!
「確かに。どうぞお通りを」
……なっちゃんが大阪スキル「パチモン製造」で、この母乳喫茶の会員証を偽造した。
見た目は完璧なものを製造する大阪スキル技。
道具を作ると、それは本物より劣る性能しか出すことが出来ないのだけど。
見た目だけ問われるものなら、完璧な仕上がりなる。
俺たちは頭を下げ、入店する。
……店の中は西洋的な地獄の環境を再現してる感じだった。
骨で組み上げたようなインテリア。
竜の鱗を敷き詰めたような壁。
「いらっしゃいませご主人様」
若い女性の声。
俺は反射的にそちらを見て、驚いた。
……これはちょっと直視が憚られるな。
そこにいたのは2人のウエイトレス。
ツインテールとロングヘア。
来ている衣装は、白と黒のゴスロリ風メイド服。
ただし、胸が丸出し。
胸の部分の布が丸ごとカットされている。
で、お尻の部分に蠍の尻尾や、蛇の尻尾のアクセサリーをぶら下げていた。
「4名様ですか? それとも2名様ですか?」
笑顔で、えげつないことを言うウエイトレス。
つまり、4人とも客か。
それとも、2人が客で女2人は商品なのかと聞いているんだ。
それに谷町さんが返答した。
「4名だ。……ところで、ここは貰い乳の依頼は受付たりしてるのか?」
……貰い乳。
時代劇で見たことはあるな。
確か、赤ちゃんのために、授乳期の女性に授乳をお願いしに行く行為のことだよな?
すると
「ええ。してますよ! メニューにない行為なので、特別料金になりますが」
笑顔のウエイトレスの言葉。
なるほど……
「現在貰い乳は依頼を受けてるのかな?」
「ええと……今は1件……」
2人組のうち、ツインテールがそう洩らすんだけど
ロングヘアが「乳子、それはダメ」と注意。
……個人情報の概念、ここにもあるんか。
ロングヘアの注意を受けて、ハッとしたツインテールは「えへへ。ちょっと言いかねます」と言い直す。
……さて、どうしたもんかなぁ……。
俺はまた、考え込んでしまった。
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