第97話 血の繋がり
「そのときだけ、動かなかった。ヤツが去った後、僕の足は再び動くようになったんだ」
……そういうことか。
必要な事は聞かなきゃダメだよな。
「何故動かなくなったか予想はつきましたか?」
その質問に、谷町さんは首を左右に振った。
その表情は、辛そうだ。
自分で自分のことを、情けないって思ってるに違いない。
「すまない。皆……」
「いいえ、足の動きを止める大阪スキルを持っているということが分かったんです。樽井が」
天王寺さんのフォロー。
そうなんだよ。大事なんだよ。
得た点が100点じゃないのを嘆くのは間違ってるんだ。こういう場合。
60点なら、60点で得られるものに注目すべきなんだよ。
そういえば……
「谷町さんは樽井に会ったことあったんですか?」
襲撃者が樽井だと分かっていた。谷町さんは。
それはすなわち、谷町さんは樽井の顔を知っていたということなのか?
話の流れ的に、面識は無いのではないかと思っていたんだけど。
だからそこを訊いてみたんだけど。
「僕は樽井に会ったことはない。写真も見たことも無い。先生にその名前と、大阪スキルのスキルテーマと、一部の大阪スキルのスキル技を聞いただけだ」
ああ、確か「刀狩り」
相手の装備している武器を残らず奪い取る大阪スキル……。
そこまでは知ってて、樽井の顔は知らなかった。
じゃあ、なんで分かったの……?
その疑問については、次の一言で氷解した。
「樽井は僕とそっくりだったんだよ」
……あ。
なるほど、と思うと同時に。
谷町さんの嫌悪感、絶望感は計り知れないだろう、とも思った。
顔による遺伝子上の繋がりの証明。
そして、谷町さんのお母さんが、谷町さんに内心思っているだろう恐怖と嫌悪感。
そこを想像すると、気の毒ってもんじゃないよ。
「その後、アイツは僕を倒し。そしてマンションに入って行き、僕の家から息子を攫って去って行った……」
……奥さん方は無事だったのか。
こんなこと、言うべきではないから黙っているけど。
殺されなくて良かったよ。
しかし……
「大阪スキル発動!」
そう、俺が今後のことを考えているところで。
天王寺さんが大阪スキルを発動させて
「ヒーリング・スペル!」
片手を拝む形にし、その技を発動させた。
同時に谷町さんの身体が薄く光り、回復していく……
そして。
俺たちは谷町京子さんの仕事場である大きな建物……占いの館に戻ってきていた。
今度は……
谷町さんを連れて。
目的は、谷町京子さんに樽井の居場所……というより、谷町さんの息子さんの居場所を調べて貰うこと。
それに対して……谷町さんは、お母さんと向き合うべきだと思ったらしい。
だから、やってきた。
谷町さんは一言も発しない。
その心中は、察せるなんてとても言えないな。
だけど……
これはやはり、避けられないことなのかもしれない……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます