第95話 それは占いませんよ
谷町京子さんの占いは予約制。
で、そのときにこう言われた。
占わない事項の存在。
これだ。
何個かあった。
例えば……
自分の命日。
他人の大阪スキルの内容。
存命中の他人の死因。
あと……
胎児の未来。
……最初はこれを俺は「京子さんの占いでは対応できないこと」それだと思ったんだよね。
つまり弱点だと思った。
他人の大阪スキルの内容なんか、特にそんな感じじゃないか。
弱点で無いなら、やらない理由が無いからね。
……でも、違ったんだ。
「次の方どうぞ」
……板間の占い部屋。
そこにお客が呼ばれる。
ここのところずっと、護衛で付き従っていたので、占いには立ち合い続けてきたのだけど。
色々なお客が来ていたよ。
若い男性もいたし、普通の女性もいた。
老人も来たね。
そんな中
その日、若い女性が来たんだ。
身なりが上等で、見たところかなりの実力者の妻か愛人だと思ったんだけども
占いがはじまると
開始後しばらくして。
いきなり、京子さんの動きが止まった。
そして、言ったんだ。
おそろしく厳しい声で。
こういうことを
「胎児の未来は占わないと事前に伝えているはずですが?」
……京子さんは相手が何を占って欲しいのかを聞かない。
聞かずに、相手が本当に求めている情報を占える。
それで、知ったんだろう。
この女性が妊娠中で、おなかの子供の未来を占おうとしている、って。
するとその女性。
深々と頭を下げ
「そこをなんとかして貰えませんか?」
……土下座したんだ。
「私、大阪デパートの支配人の第3夫人なんですけど、どうしても第1夫人になりたいんです!」
必死の形相で女性は続ける。
「この子があの人の跡取りに指名されれば、その生母も第1夫人になれるかもしれない! でも、指名されないならその可能性すらない! 私の必死さをご理解ください」
そう、必死で頼み込む。
だけど京子さんは
「……で、跡取りにはなれないと分かったら堕胎するんですね? ……そんなことに加担はしませんよ。……ここは地獄の大阪で、そして私は淀川の魔女。私は客を選びます。お引き取りを」
「そんな! 酷い! お金はたんまり弾むのに! それ以外にもたくさんお金払って順番早めて貰ったのに! そしてそれでもだいぶ長いこと待ったのに!」
……強制退出させられるとき。
セレブなのにめっさ暴れてた。金返せとも言ってたな。
威厳ゼロ。
「……禁止項目の注意を徹底して頂戴。あと今後、あの人の占いは一切拒否するから、それもコミで徹底お願いね」
「分かりました」
京子さんは部下の人にとても厳しい顔で言っていた。
胎児の未来。
これは占えないんじゃない。
京子さんは占わないんだ。
信念で。
そして俺たちが、流石谷町さんのお母さんだと胸を打たれていたとき。
騒がしい足音がして。
占いの間に人が入って来た。
あの女性が手をつけられないレベルで暴れているのか?
そう、一瞬思ったんだけど。
続いた言葉で、俺は凍り付いてしまった。
「京子様! ご子息が襲撃を受けて負傷したそうです!!」
えええええ!?
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