第94話 京子さんの気持ち
谷町京子さんの一日は朝が早い。
朝5時頃に起き出して、寝るのは夜12時過ぎ。
その間、ずっと働いている。
お客が切れないというのもあったけど。
ずっと勉強してるんだな。
空き時間も。
主にカウンセリング関係の本を読んでるみたいだった。
最初、勉強熱心なのかと思ったのだけど。
……多分、違うわ。
何もしないで落ち着いてしまうと、考えたくないことを考えてしまうから。
それでずっと働いているんだ。
それに気づいたのは
仏壇を見たときだった。
この地獄の大阪でも仏壇があるのか。
そう思って、つい確認してしまった。
宗派何なのか?
そこが気になったんだよね。
だって死後の世界なのに。
相当、京子さんが生前信心深い人間だったのか。
そういう可能性を考えて
……非難されるかもしれないけど。
仏壇の収納を少し、探ってしまった。
どうしても気になったんだよ。
何度も言うけど、この死後の世界に神に祈る祭壇があるってことが。
……散らかさないように、気づかれないように。
そう思って、コッソリ見た。
すると……
1冊のノートが出て来た。
仏壇にノート……?
ちょっと内容の想像がつかなくて。
パラパラと開いて中を見てしまったんだけど。
……最初はこれが日記帳であるとは想像もしてなかったよ。
それに気づいた瞬間、これは見てはいけないものだ。
そう思い、俺はノートを閉じてしまった。
……だけど
ふと、また気になってしまったんだ。
果たして、天海を倒した日の日記はどうなっているんだろうか……?
正直、ゲスな好奇心の誹りを受けても仕方ない気がする。
でも……
ひょっとしたら、谷町さんを励ますことができることが書かれているかも……?
そんな期待を言い訳に、俺はふたたびその日記帳を開いたんだ。
そして、その日付のページを開いて
俺は……絶句した。
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
ページ一杯に、謝罪の言葉が書いてたんだ。
何に対してかは全く書いていなかった。ただ、ごめんなさい、って。
……これが、谷町京子さんの現在の気持ちなのか……
見ちゃいけないものを見た。
途端に罪悪感が襲って来る。
そして、罪悪感を覚えながら。
谷町京子さんの現在の気持ちを察した。
……谷町京子さんは、俺たちと谷町さんが仲間であることを知ってる。
この護衛の件も、谷町さんの意思なのも分かっているはずだ。
それを受け入れてくれた。
そこから、想像できること。
それは……谷町京子さんにとって、谷町さんは敵では無いってことなんじゃないか?
これは、俺のおめでたい想像の話かもしれないけれど。
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