7章:最後の大阪四天王

第93話 谷町親子

「よろしくお願いしますね」


 あのときは御簾ごしだったけど。

 今日は対面だ。


 淀川の魔女こと、谷町京子さん。


 ……年齢上は30才前なんだよな。


 あまり、谷町さんに似ていない。


 巫女の衣装に身を包んだ女性。

 まだ30才前だから当然かもしれないが。

 生命力を感じることが出来る女性。


 おっとりした感じの女性で、美人というより可愛い女性だった。

 髪型は長い髪をお団子状に纏めている形。


「以前は占っていただきありがとうございます。その恩返しでしっかり護衛させていただきますから」


「はい。同じく頑張ります」


「頑張ります!」


 俺の言葉に、天王寺さんとなっちゃんが続く。


 ……俺たちは、樽井の襲撃から谷町さんのお母さんを守るためにここに来たんだ。




 あの日。

 天海を倒し、谷町さんのお母さんの靴を燃やした日。


 谷町さんは


「今後、樽井が襲撃してくるだろうね」


 靴を灰にした後。

 今後の行動を話し合う際。


 出て来た行動予想。


 そりゃそうだろう。

 曲りなりにも心の友と呼んでいた相手だ。


 それを無残に殺されて、黙っているはずが無いよ。


 ……クズ野郎にそんな友情があるのか?

 そう思うかもしれないけどね。


 言葉には重みがあるんだよ。

 友人と呼んだ相手を殺されたのに平気な顔をしている。

 それは間違いなく自分の価値を下げるんだ。

 そんなことはそいつがクズであるかどうかとは関係ない。


 強さに拘る戦闘狂タイプでも無いだろうし。


 だから、おそらく。

 仇討ちに撃って出てくる。


 なので、俺は谷町さんと同意見。


「ええ。そうですね」


 じゃあ、どうするのか?




 予想されるのは……


①谷町京子さんへの攻撃

②谷町さんの家への襲撃


 この2つか。

 俺たちの方はおそらく考えにくい。


 だって俺たち、樽井と関係がほぼ無いからな。

 恨み恨まれの関係性が出来てる谷町さんとは次元が違う。


 そういう状況では、優先順位は低くなる。

 まず谷町さんを潰して、それからだろう。


 だけど


「谷町さん」


 俺は提案しようと思った。


「何かな?」


 振り返って来る谷町さんに


「俺たちが、谷町さんのお母さんを護衛します」


 ……これを。




 俺たちが谷町さんのお母さんの護衛を引き受けた理由。

 それは……


 おそらく、狙われるのはお母さんだろうという予想。

 理由は、谷町さんの家には、樽井の血縁上の孫がいるからだ。


 ……言い方は悪いが、遊びで犯して孕ませた女と、自分の血を引いた孫。

 より殺しやすいのは前者じゃないのかと思ったんだ。


 あとひとつは……


 谷町さんをお母さんと合わせるのは酷だと思ったから。


 何故って……

 谷町さんのお母さんは、自分の息子を憎悪の目で見る可能性があるから。


 この前の戦いで、谷町さんはお母さんの望まない子になってしまったから。

 ありえるんだ。


 ……そんな酷いことを谷町さんに強要できなかった……。




 京子さんは、表面上は何もないように見える。

 俺たちを見て、谷町さんの名を耳にしても。


 でも……内心は分からない。


 これは谷町さん親子の問題だから、俺たちは口を出すべきじゃないかもしれないけど。


 ……お母さんはどう思っているんだろうか?

 谷町さんを。

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