第89話 天王寺理香子の覚悟

★天王寺理香子目線



 天海を迎え撃つために周囲の物質を下僕化しているとき。


 ふと、思ったことがあった。

 さっき、逢坂さんは言っていた。


「天海の子供は分身じゃない。独立した人格なんだ」


 ここだ。

 ……男性を馬鹿にするわけじゃないけど。


 男性は、若い女の身体に惹かれるよね。

 それ、何才からなんだろうか?


 天海の子供たちも男だ。

 もし、そのくらいから女の身体に興味あるなら、足止めが出来るかもしれない。


 ……私、一人っ子で兄弟がいないから。

 そこがどうにも分からなかった。


 生前にも、恋人が出来なかったこともある。


 友人と呼べる人間は、ナツミしかいなかったし。


 会話する人間はそこそこいたけどね。

 そういう人とは、突っ込んだ話はしないから……。


 だから、私は逢坂さんに聞いた。

 この人なら、信頼できる答えをくれる。


 その確信があったので。


「逢坂さん。不愉快にならないで聞いて下さい」


「何?」


 ナツミと何やら複雑な会話をしている逢坂さんは、私の言葉に反応してくれた。

 今、忙しいところを。その作業を中断してまで。

 そんな逢坂さんに。

 ……正直、抵抗のある質問だったけど。


 思い切って、やってみた。


「……小さい男の子って、女性の身体のパーツのどこに惹かれると思いますか?」




 一斉に、逢坂さんと谷町さん。

 2人の男性に襲い掛かって行く天海の子供たち。


 見た目は多少愛くるしいけど、その存在は私はゴブリン同然だと思った。

 言葉が通じるだけの動物。


 だから。


 ふと、思いついたんだ。

 こういう手を。


 私は、事前に下僕化していた、着ていた白いブラウスに命じて前のボタンを全て開けさせた。

 そして同時に。


 自分の手で、ブラジャーを上にずり上げた。


 ぷるん、とまろびでる私の胸。


 決して小さくは無いと思う。

 目立って大きくも無いけど。


 ……生前は恋人が出来たことが無かったので、私は異性にこれを晒したことが無かった。


 私は元々、母乳喫茶に売られる運命だった。

 そこをナツミと逢坂さんに救われて、今がある!


 だから……ここで1回くらいおっぱいを外にホリだしても!(※大阪弁で放り出すの意)




「そりゃ、おっぱいだな」


 真顔で答えられたとき。

 私の顏から血の気が引いた。


 パンツくらいで良いなら、スカートを捲り上げても。

 そんなことを思っていたけど。


 まさかおっぱいだなんて。


「お……おっぱいですか?」


 声が震える。


「そうだ、おっぱいだ」


 真剣な表情で、逢坂さん。

 逢坂さんは続けた。


「……多分幼児性の延長だと思うんだけど、男子は性に目覚める前は圧倒的におっぱいだ。それ以外の部位に興味を持つのは後の話なんだよ」


 ……逢坂さんがそう言うなら。

 多分そうなんだ。




 そして……


 私は実行した。

 おっぱいを丸出しにしながら、私は叫んだ。


「こっちを見なさい!」


 ……全員、こっちを見た。


 谷町さんはチラ見で察して終わったけど。

 逢坂さんはちょっとだけガン見してた。


 ああ……

 何だ少しだけ、逢坂さんに裏切られた気持ちになった。

 自分勝手なの分かってるけど。


 そして天海の子供たちは……


 全員、足を止めて食い入るように見てる。


 ……その視線の先。


 それが、肌で分かってしまった。


 私の乳首。


 そこに注目してる。

 ……この子たち、どこに注目するべきなのか理解してるんだ……!


 ご……ゴブリンそのもの!

 怖気が立った。


 助けて! ゴブ●ンスレイヤーさん!


 私は実在しないヒーローに助けを求めながら。

 事前に下僕化していた建物のガラスに命じた。


 ちょうど、私の背後にあったので。


 ガラスが割れ、弾丸化して天海の子供たちを襲う。


 私のおっぱいに釘付けになっていた天海の子供たちは、残らずそれに被弾し、倒れ伏し。

 生姜に戻って、さらに……消滅した。


 勝った……けど

 私は崩れ落ちるように座り込んで。

 胸を隠しながら。


 ……泣いてしまった。

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