第66話 犯罪仮面がやってきた

「てめえが犯罪仮面か……!」


 男児野がそう、憎々し気に言い


「何をやりやがった……!」


 そう問い返した。

 そう。


 今男児野は、犯罪仮面の言いなりになってブラックホールを消した。

 何でだ……?


 すると、彼は答えてくれた。


「……今のは底辺犯罪者が、勢いだけの恫喝で、法に無知な一般人を脅して言いなりにすることを超能力に昇華した技……なので当然、この技を実際に見た人間には二度と通用せん……」


 なるほど……

 使いどころの難しい技だな。


 俺はその解説を聞きつつ、彼を仲間に迎え入れた後のことを考えていた。


 ……この人、助けてくれたんだから、仲間になってくれるんじゃ?

 そんな思いを抱いたので。


 だが、敵である男児野は


「へっ、そうかよ。ならば」


 ヘアアアアアア!


 また上を向き、大口を開ける。

 またあの技をやる気か……!


 身構える俺たち


 だが


 その瞬間だった。


「違法駐輪の檻」


 ……男児野の周囲を囲むように自転車が出現したのだ。

 全部、駐輪状態だ。


 するとだ


 発生するブラックホール……

 その吸引の力が、何故かこちらに働いてこなかった。


「……な、何故だ?」


「ハイエース召喚」


 動揺する男児野を無視して、犯罪仮面はこの室内にハイエースを呼び出した。

 召喚されたハイエースに乗り込みながら


「違法駐輪の檻は、移動を妨げる邪魔な違法駐輪を超能力に昇華した技……発動すると、その瞬間から駐輪された自転車のある空間が通行不可になる。……すでに通過しているものは対象外だがな」


 乗り込み、シートベルトを締めないで、ドアを閉じて車を発進準備。


 そして


「……手で自転車を撤去したら、解除できるぞ」


「な、なるほど……」


 男児野は、言われるがままにせっせと自転車を撤去しはじめた。

 何故か、自分を拘束している餅が消滅したため。


 それが意味するところ。


 ……こいつ、大阪スキルを切った?


 何で……?


 そこで、ハタと気づく。

 ああ、そっか。


 違法駐輪で囲まれている間は、こっちの攻撃も届かんしな。

 だったら、餅が消えるまでのタイムラグの問題も無視できるか。


 さっきの技で、手下の忠誠心もドブに捨ててるわけだし。

 自分でやるしか無いよなぁ。

 

 でも、そのせいで……

 

 ……ブラックホールが消えているんだよな。


 それを、犯罪仮面は見逃さなかった。


「飲酒運転ブレイク!」


 ハイエースを急発進させた。


 迫りくるハイエース。


 男児野は慌てて自転車をバリケードのように置いて防ごうとするが……


 その自転車が、消滅した!


 ……自分の技だもの。

 自分で自由に消せてもおかしく無いよな。

 大体、違法駐輪したのは犯罪仮面だ。

 自分の自転車をどうしようと、他人に文句を言われる筋合いが無い以上、自由に消してしまえても別に問題無いよな。


「ひいいいい!」


 それにパニックを起こし、ハイエースから背を向けて逃げ出す男児野。

 室内を走るハイエース。追い回される男児野。


 そのまま7~8メートルは逃げただろうか。

 そこで反撃の体勢が整ったのか、男児野は


「大阪スキル発動!」


 大阪スキルを再発動し、足を止め……振り返る。


「リフレクトフライ返し!」


 ……ハイエースを跳ね返す気か!?


 俺は男児野の大阪スキルの強さに戦慄するが。


 キッ、というブレーキ音が鳴り。

 その前にハイエースが停車した。


 そして、ドアが開き。

 犯罪仮面が降りてくる。


「……な……何?」


 男児野は、犯罪仮面の意図が分からないのか。

 動けずにいたが思い直し


灼熱の烏賊の触手バーニング・クラーケンハンド!」


 肩から5本ずつ。

 計10本の烏賊の触手を生やして、犯罪仮面の身体に巻き付けた。


 だが


 犯罪仮面は全く意に介さず、男児野へ向かって歩いていく!


「……無駄だ。今のお前はこの私に力比べでは絶対に勝てない」


 そして……


 巻き付いていた触手を全て引き千切った!


「……あ……あああああ!」


 その光景に絶望したのか。

 男児野は最後の手段に打って出た。


 突進してきたのだ。


「コテブレード……」


 そして腕を振り上げ大阪スキル技を発動しようとする。


 だけど


 さらに踏み込んで来た犯罪仮面。

 彼は男児野の1メートル圏内に近づいて


「痴漢の手」


「格子斬……」


 その瞬間だった。

 突進し、突き出した指の前に光の格子を作ろうとした男児野。

 彼はその格子を……


 自らの頭部に向けて解き放った!


 突如、腕の方向を自分の顏に向けたのだ。


 バシャッ


 一瞬で、男児野の頭部がサイコロ状に斬り刻まれる。

 頭を無くし、男児野は倒れた。


 ……決着。


 男児野の死体の傍に立ち尽くす犯罪仮面。

 彼はしばらくそれを見ていたが。


 やがて向き直り、こう言った。


 俺は、耳を疑った。


「……次はキミたちの番だ」


 え……?

 これ、仲間になってくれる流れなんじゃないの……?

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