第60話 淀川区の危機
「先生、この問題はどうやって解くんですか?」
「ナツミ、その問題なら私も分かるけど」
大阪デパートの書店で、高校生向けの参考書を買って来たんだよね。
で、なっちゃんと天王寺さんが勉強をしている。
……木津川さんに教えて貰いながら。
こないださ、銀塊を売って大儲けした話をしたと思うけど。
そのお金を山分けしようとしたとき
「私はこのお金を貰うほどの仕事をしていない気がするな」
そう、木津川さんが言いだして。
このお礼として
「高校生の勉強ならみることができるよ私は」
……家庭教師を買って出てくれた。
で、店番は俺がして。
その間、女子2人は木津川さんに勉強をみて貰ってる。
奥の部屋に机を置いて、色々だ。
物理とか化学とか数学とか英語とか。
……いいんじゃないかな?
少年少女は勉強するものだ。
それが自然なんだから。
……俺もまあ、高校卒業して大学行って、その後2年ほど院に行った経験あるから、勉強はそこそこしてきたけどさ。
正直、高校生の勉強を教えることには抵抗があるというか……
自信が無い。
得意科目ならいけると思うんだけどさ。数学とか。
その他はなぁ……ギリ大学合格できるレベルまで上げただけだし。
だから他人に教えられる自信が無い。
その点、木津川さんはガチ優秀な人だし。
女子高生2人の家庭教師する分には問題ない人だよなぁ……
うん……正直憧れを持ってしまう。
本当に優秀な人間……
それにしても
お金だけ追うような生活じゃ無く、勉強が出来て嬉しそうだ。2人とも。
……勉強の本来あるべき姿のような気がする。
そんなことを向こうをチラ見して思いつつ。
俺は店番を続けた。
今日はお客来ないから暇だな……
道楽蟹の甲羅、まだ仕入れなくても困らんし……
ふあああ、と欠伸しそうになったとき。
店舗のドアが開かれて。
誰か入って来た。
俺は誰だと向き直る。
それは……
「やあ逢坂さん」
厳しい表情を浮かべた11才の少年……谷町さんだった。
「谷町さん、今日は何用で?」
彼が来たということは、大阪四天王関係なんだろうか?
谷町さんの表情は……とても厳しかった。
……何があったんだ?
するとだ
「……淀川区で、路上での誘拐事件が続発している」
彼が、緊張した面持ちでそう言って来た。
まさか……?
「まさか、谷町さんの奥さんたちが!?」
そう、レジから身を乗り出して、思わず確認してしまう。
すると
「いや、妻たちは無事だ。……安心はできないけど」
とのこと。しかし……
明らかに焦っている。
多分、妻の安全を守れるのは淀川区だと思って、居を構えたところもあるんだろう。
それが脅かされているから……
気持ちは、分かる。
「……だけど、これは逆にチャンスなんだ。こんな事件を犯罪仮面が放っておくはずがない」
だが谷町さんは、自分の焦りで終わらずに、建設的なアイディアを出して提案する。
この人は、こういう人だよな。
逆境に立たされても、解決できる手段を考案して、実行に移す。
うん。俺もそうするべきだと思う。
俺は頷き。
多少申し訳ない気分になりつつも、勉強に勤しんでいる女子高生2人に、俺はこの高校生には本来酷な運命を伝えに向かった。
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