第45話 女尊男卑の街
そして北区に来た。
北区……アマゾネスが支配する女の街。
街の様子は特に変化は無い……気がする。
「ほら、グズグズしない!」
ビシッとしたスーツ姿。
一張羅の天王寺さんが、俺を縛り上げた縄の一端を握って、俺を引っ張った。
……俺、奴隷のポジなのよな。
ここ、男は奴隷しかいないから。
……女性に変装できるの、谷町さんくらいしかいないから。
「まったく、情けない奴隷ですね」
同じように一張羅を身に着けたなっちゃんもそれに便乗する。
まあ、そっちの方が奴隷狩りを行ったアマゾネス候補生みたいに見えるよね。
谷町さんは、声でバレるとまずいので、しきりに女っぽい仕草を繰り返していた。
ちなみに、彼の女装はワンピース。
貧乳美少女を装っている。
……うん。これは演技なのよ。
本来のこの2人の女子は、奴隷狩りを行うような女子じゃないのよ。
自分も特権階級に入りたいからと、弱そうな男を捕獲して、手土産代わりに連行してくるようなクズ人間ちゃうのよ。
でもそういう設定で、北区に入ったのよね。
自分もアマゾネスになりたい。手土産の奴隷を捕まえて来たので、支配者サマに会わせてくれ、と。
これで聞いて回る。
別に変じゃ無いでしょ?
……俺が少し辛いけど。
最初にバーを見つけたので、そこに入った。
落ち着いた雰囲気のバーで、相応しいジャズの音楽が流れている。
店舗内は……綺麗だった。
「あら、珍しいお客さん」
バーの主人は、中年女性だった。
着物を着用している。
「この街は初めて?」
ニコニコしながら優しい口調でそう訊いてきたので
「はい。ここに来れば女が伸び伸びと生きられると聞いたので」
「私たちもアマゾネスになりたいです」
……2人とも、笑顔だった。
なんか、こええよ。
悪い子じゃないはずなのに。
女子はその気になれば、いくらでも芝居ができるってことなのか?
なっちゃん、すごく良い子なのに。
義理堅いのに……。
天王寺さんも……
色々とショックだったので、店の中を見回した。
……すると。
店の隅っこで箒と塵取りで店舗の中を掃除している男性が居た。
背が低くて、太ってて、禿げている中年男性。
そんな男性が、ウエイターの制服を着て一生懸命にやっている。
それが、見て取れた。
だけど
ガタッ
箒の柄が、壁際に置かれていた花瓶に当たって。
ガシャーン!
落ちて、割れた。
……中年男性が真っ青になる。
すると……
「鈴井」
「も、申し訳ございませんご主人様!」
……男性に冷たい目を向け、豹変する店主の女性。
そして土下座する中年男性。
しかし、店主の声は底冷えしていて、そこに温かみが全くない。
「……お前はすでに2回失敗した。3回目は無いと前に言った。全てお前が悪い」
言い訳は全く聞かず、自分の言いたいことだけを言う。
これは会話では無い。
……男を人間扱いしていない。
それを、目の前で見せられて理解した。
確かに、ここは男の地獄……
それを、次の瞬間、決定的に分からされる。
店主の女性は……こう言ったのだ。
「眉毛ボーン」
ボンッ
その瞬間、中年男性の額のあたりが吹っ飛び、中年男性は横倒しに倒れた。
……爆弾なのか?
額の辺りが吹っ飛ぼされ、床に脳みそが零れていた。
涙と鼻水を流し、怯え切った表情で息絶えている中年男性。
「……全く使えない奴隷だったわ。あとでまた、買いにいかなきゃ」
そんな男性の死にざまを、店主の女性は冷笑を浮かべつつ見つめていた。
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