第44話 アマゾネスの国

「通り魔だー! 無差別殺人だー!」


 ワーキャーいう悲鳴が聞こえる。


 もう、慣れたものだった。


 俺たちは悲鳴の方向にダッシュして、すぐに行動を開始する。


「サーディンランブラスト!」


 目を血走らせて包丁を振り上げ、通行人に襲い掛かっているやせ細った男に、俺はイワシの奔流を浴びせて吹き飛ばした。


「グワアアアア!」


 吹っ飛ばされて転がる男に、天王寺さんが駆け寄って


 流れるようにズボンとパンツを脱がし、そのアヌスに電動こけしをねじ込んだ。


「アーッ!」


 男の悶え声。


 ……成長したなぁ。

 全く迷いも躊躇いも無いや。




「おなかが空きましたね。ごはんにしませんか?」


 そうやって、遭遇した殺人鬼だとか強盗だとかレイプ犯を電動こけしで無害化しながら。

 天王寺さんはお昼ご飯の話をした。


「……中央区でごはんかぁ……」


 隣で天王寺さんと同じ作業をしながら、なっちゃん。

 ……彼女も慣れたものだなぁ。殺害してしまうよりはマシだと、このトレーニングを開始して。

 ちゃんと出来るようになったんだ。


 ここ、治安悪いから、色々と面倒なんだよね。

 客が強盗であることを想定してる場合があったり、無かったり。


「あ、牛丼屋さんがありますよ!」


 なっちゃんが食べ物屋を見つけたのか、嬉しそうな声をあげた。




「いらっしゃいませー!」


 首輪をつけた店員たちが複数近寄ってきて。

 俺たちの持ち物チェック……具体的に言うと、金属探知に爆発物検査をした。


「ご注文をどうぞー」


 ボディチェック中に、メニューを渡される。

 牛丼は並から特盛まで。トッピングはキムチだとか生卵だとか……。


 ……納豆入れて食べると美味いんだよな……。


 よし、と思い……


(あっ)


 納豆はダメだ!

 大阪スキルが使えなくなる!


 ……あ、あぶねー。

 食欲に目がくらんで、納豆を食べてしまうと俺、丸腰になるじゃんか。


「納豆は食べたらダメだよ」


 メニューを見ている女子2人にもそれを言う。

 ……どうも天王寺さんは知らなかったようで


「……何でですか?」


 そう、訊き返して来た。




「いただきます」


 1つのテーブルで、牛丼3つ。

 俺の牛丼が大盛。他2人は並盛。

 トッピングは俺はキムチと生卵。

 他2人はナシ。


 食べ始める。

 美味しい。腹減っていたから。


「そういえば、北区のことなんですけど」


 なっちゃんが一口食べた後、北区の話をはじめた。

 呑み込んで


「……アマゾネスの支配する地域なんですよね?」


「ええ。女尊男卑の男性の地獄だって話ね」


 そう、天王寺さん。


 ……らしいね。

 曰く、そこは男は奴隷で、人権が認められないらしい。


 少しでも女に逆らうと、平気で男は殺される。

 ……前に、大阪ハンターへの依頼で「アマゾネスに息子を攫われた」なんて依頼が来てたけど。


 実情を理解すると、酷いなんてもんじゃないな。


 多分、奴隷を消費した分、他の地区から補給してるんだろうな。

 外道ってもんじゃねぇぞ。


 ……で。

 北区の支配者である、アマゾネスの女王が「中津由紀子なかつゆきこ

 中年女らしい。美に拘る人物らしいけど。


 使う大阪スキルの名前は、まだ不明。

 この辺、現地に行ってみないと分からないのかもしれない。


 ……俺たちは、まずここを落とそうと考えた。


 理由は、害悪度が淀川区より段違いだからだ。

 居場所が特定されている、淀川区のもう1人の大阪四天王と比較して。


 まず、こいつを消さないと。


 しかし……


「どうやって入って行けばいいんでしょうかね?」


 なっちゃんがそう、問題点を口にする。

 そうだよね。


 ……あそこ、男は自由に動けんし。

 谷町氏はまだ11才だから、女装したらなんとかなると思うけど。


 俺はなぁ……


「最悪、私たちと谷町さんで攻略するしかないかもね」


 天王寺さんがそうコメント。


 うーん……。

 その件だけど……。


 1個だけ、アイディアがあるんだよね。


 ……できればやりたくないけどさ……

 でもこれは……俺が言い出さないと駄目だろ。


「あのさ……」


 そうして。

 俺は自分のアイディアを口にした。


 ……2人は驚いた。

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