第46話 男に人権は無い

 眉毛ボーン……だと?


 吉本新喜劇のギャグだっけ……?

 それをこいつら、殺人のキーワードに使ってるのか……?


 いや……

 おそらくこれは大阪スキル。


 吉本新喜劇と関わるやつだ。

 おそらく観光系……!


 俺は、そうやって推理しながら。


 床にゴミのように倒れ伏している死体……

 哀れな頭を吹っ飛ばされた中年男性のために祈りを捧げた。


「……すっごいですね」


 そして天王寺さん。

 彼女は顔は笑顔で。

 店主に媚びるような表情を浮かべていた。


 反対に、なっちゃんは青くなっていた。

 ……さすがに、こんなのは演技では乗り越えられないのか。


 その表情変化に気づいた天王寺さんが、なっちゃんの顏をそっと自分の身体の影で隠した。

 気づかれると色々面倒だしね。

 アマゾネス志望なのに、何青くなってんの? みたいな。


 そして、天王寺さんは店主に問う。


「それ、大阪スキルですか?」


 ニコニコしてる。

 ……でも、手が少し震えていた。


 不機嫌になってるんだ。許せないとは思ってくれているのか……


 すると、店主は


「ええ。これは大阪スキル。その奴隷がまだ未処理なら、中津様の城に奴隷を連れて行けば、処理していただけるわ」


 誇らしげに、人殺しの仕掛けを説明する外道。

 天王寺さんは笑顔のまま、さらに訊く。


「中津様に面会するには、何か資格や許可を取る必要ってあるんですかね?」


 すると


「特にないと思うけど。女であるということ以外は」


 少し思案して、店主は答える。

 付け加える形で


「……でも、中津様は留守中に面会希望が来るのをお嫌いになるから、希望を出す前にそれは調べておくべきね」


「分かりました」


 ……何かトラウマでもあるのかね?

 留守中に誰かが訪ねてくるのが嫌いだってのは。


「中津様のご住所は?」


「それはちょっと説明しづらいわね……北新地まで行って、そこで調べてみてくれるかしら?」




「……なんであんなくだらない理由で、あの人はあのおじさんを殺せたんだろう……」


 なっちゃんはボソリと、小さい声でそう言った。

 さすがに、口に出さないではいられなかったのか。


 ……気持ちは分かる。

 あんなの、黙っているにはあまりにも辛いよな。


 すると谷町さんが口を開いた。

 無論、声量は抑えて


「……あの女性は、心の底から男という性を憎悪している。彼女らの中では、男はゴキブリと同じものになっているんだと思う。……何があったのかは知らないけれど、そこは間違いない」


 そしてこう続ける。


「そしてアマゾネスになった女性は、おそらく全て同じだ。そうなった理由は分からないが。……僕は男だからね」


 ……谷町さん。

 俺はこの少年の言葉に、敗北感を感じるとともに。


 溝みたいなものを感じたな。

 男の世界と、女の世界の。

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