第41話 大阪四天王
「……ここは、キミらの大阪スキルの内容次第だ、って言いたいところだけど」
彼はそう言って、こう続ける。
「フラックを初見で、苦戦しつつも撃退できた大阪スキル使いなんだよね。……是非、迎え入れたい」
……口元に笑みを湛えながら。
それを俺は見て
……やった! 合格を獲得できた!
俺はガッツポーズを心で取った。1年前に、勤めていた会社の内定を取ったときの嬉しさが蘇る。
……勝算はあった。
自分の大阪スキルをぼかして言う人が、わざわざ俺らの大阪スキルの内容を確認しに来た。
それはつまり、俺たちが有用だと思えるなら、仲間に入れたいってことだわな。
ちょっと会話した感想だけどさ、彼は「自分は良いけど他人はダメ」なんて、甘えた考えを持つタイプの男じゃない。
確認しに来た以上、それはただの興味本位ではありえない。意味のある行為のはずだ。
だから思い切って、持ち掛けたんだ。
あなたの意図は見抜いてますよ、というメッセージを込めて。
そしたら、いけた。
やったぜ!
仲間になれば、順番抜かしの口利きしてもらっても問題ないよね。
だって仲間なんだから。特別扱いして貰っても良いってもんだ。
これで俺たち、自分の宿題の内容を知ることが出来る……!
そう、喜ぶ俺を他所に。
「……仲間を探してたんですか? 谷町さん?」
いきなりの展開に、天王寺さんは少しついて行けてない。
隣のなっちゃんも同様のようだ。
すると彼は頷いて、こう返した
「僕には目的があるんだ。……先に言っておこう」
……彼の……目的?
俺は唾を飲み込んだ。
一体、どんな目的なのか……?
彼の発言を見守る。
彼は言った。
そして。
俺たちはその発言に度肝を抜かれたんだ。
「……僕は大阪四天王を全て倒して成り代わり、大阪王に謁見する権利が欲しいんだ」
えっと……大阪四天王?
ちょっとだけ、聞いたことあるけど。
……この地獄の大阪に君臨する4人の凄腕大阪スキル使い。
確か、北区と淀川区にそのうちの2人が居るんだよな?
確かそういう話だったはず。
そんな風に、話の大きさに動けなくなっている俺たちを見て
「……どうする? それでも仲間になるかい? 今なら撤回してもいいよ?」
フフ、と笑う谷町氏。
……そこでちょっと理解する。
ここで受けたら、後で撤回は許さないと。
そういう意思表示だ。
お前ら、自分の発言に責任を持てよ、と。
……多分、そんなことをしたら、彼の権力やコネを全力で使われて、俺たち潰される……
ちらり、と天王寺さんを見る。
彼女は……ああ
これは分かってる顔だ。
だから、そっと囁いた。
「……なっちゃんにもこの言葉の意味を教えてくれないか?」
すると
「……ナツミだってそれぐらい分かりますよ。侮らないであげてくださいますか?」
おっと……
ちょっと強めに返されてしまった。ゴメン。
……全員の顔を見て、俺は意思確認をするようにして、頷く。
女子2人も頷く。
……よし。
意思確認が取れたなら
「……なんで大阪王に謁見したいんですかね?」
これはね、絶対に訊いておかないと。
その目的が悪ならば、仲間に入るわけにはいかないし。
それを聞いて、彼は教えてくれたよ。
「この地獄の大阪を、もっと安全で平和な世界にしたいんだ」
5人の子の父親だからね。
そう言った彼の顔は……小学生に見えなかった。
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