第40話 5人も嫁さんいて何が悪い!

「僕は既婚者だ。さっき見せただろう? ……馬鹿にしてるのか?」


 ……マジで不愉快になってる表情だった。

 しきりに頭を触っている。

 イライラしたときの癖なのかな。


 ……えっと……


「キミは5人も嫁さんいるんだよね?」


「ああ、その通りだが? 高級娼館で厳選して、健康状態と性格面、知性で問題の無さそうな5人を選んで娶った」


 ……全く悪びれもせずに堂々と言ってのける少年。


 うーん……


「キミは女に目が無いんじゃ……?」


「僕の性嗜好はノーマルだ。それが何か悪いのか?」


 ……いかん。

 すっげえイラつかせている気がする。


 目に凶悪なものが混じり始めている。


 すると


「……申し訳ありませんでした。巷で貴方に対する悪評を聞いてまして。その……女を妊娠させることに喜びを感じているとか、はじめてを奪うことが趣味とか……」


 助け船。

 天王寺さんが俺の隣で頭を下げてくれた。


 ……うう、申し訳ない。

 ありがとう……言いづらいだろうに……


 俺は年長者なのに、年下の少女に助けられたことにショックを受けつつ感謝した。


「……僕が妻を5人娶ったのは、子供がなんとしても欲しかったからだ」


 苦虫を嚙み潰したような顔で言う。

 腕を組んで、彼は続けた。


「……ひとりだったら、精子と卵子の相性が悪いとか、そもそも妊娠しにくい体質だったとか。そういう事態が起きたときに困るじゃないか。だからといって、妻に選んだ女性を放り出すわけにもいかないし。……仮にも妻に選んだのだし」


 ……なるほど。

 なんか、全く想定外の回答が返って来たんだが……?


 しかし、そうなると……


 なんで子供が欲しかったの?

 それが疑問になるんだけども。

 11才で父親になるのはいくらなんでも早すぎるというか……


 でも、そういうのはプライベートな問題だから、突っ込まない方がいいんだろうな。


 ……よし。ひたすら謝ろう。


「申し訳ありませんでした。噂を鵜呑みにしてすみませんでした」


 俺も頭を下げる。

 すると


「……いいよ。普通の男は妻は1人だからね。金を積んで5人確保した僕がおかしいのは認めるところではあるし」


 許してくれた。


 ……と、ホッとしてたら


「私たちの夫のことを誤解しないようにしてください!」


「将さんは優しいし、労ってくれるんです」


「一生支えたいと思える素晴らしい人です!」


「私たちと子供たちの面倒を、最後まで見てくれるって誓ってくれたんです!」


 ……彼の奥さんズが口々に彼のことを立てる発言をした。

 うーん……すげえ愛されてるのだけは理解できたよ。


 素晴らしい……と言えばいいのかな?




「……ところで。キミらは全員大阪スキル使いなのかな?」


 ……彼は自分を立てる発言をした嫁さんズ全員に抱擁をした後。

 こっちに向き直り、そう言って来た。


 ……あ、これは


「はい。その通りです」


 俺は女子2人に目配せし、それを認める。


 ……これは、お願いを聞いてもらえる流れ。

 そしたら案の定


「……自分の大阪スキルを紹介してもらえるかい?」


 ……この質問が来た。


 だから、俺はこう答えたよ。


「あなたの仲間にして貰えるなら」

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