第34話 谷町家
谷町将の部屋の前に着いた。
……いよいよか。
ちらり、とドアの斜め上を見る。
……機関銃があるな。
最後の砦かな。
だけど。
アッハーン!
……天王寺さんはそんなものを見逃さない。
電動こけしを一閃させ、キチンと機関銃をよがらせて、使い物にならなくする。
これで完璧。
「リカちゃん、インターホンを押していい?」
「……どうぞ」
なっちゃんが天王寺さんに許可を貰い、谷町家のインターホンを押した。
ピンポーン。
……
返事なし。
向こう、見えてるのかな?
多分、見えてるはずなんだけど。
「……しょうがない。ダメ押し」
動きが無いので、天王寺さんがさらに動いて
ドスッ
……ドアに電動こけしを突き刺した。
アアアアア!
ドアが悶える。
そして
ずず、とドアのど真ん中に、大きな穴が開く。
そこに
「すみません、谷町将さんのお宅ですよね? 大阪ハンターの新米なんですけど、谷町将さんに挨拶に来ました」
……例え防音仕様になっていても聞こえるはず。
穴が開いてしまえばね。
すると……
「……しゅ、主人は留守です」
……怯えた女性の声が聞こえて来た。
おや……?
「……ごめんなさい」
謝る。
……めっちゃ怖かったよね。
……留守の可能性を考えてなかったよ。
大阪ハンターの集まる店で姿を見なかったから、てっきり今日は家にいるんだと思っていたら。
まさかの留守。
「……私も謝ります。申し訳ありませんでした」
天王寺さんも謝っている。
拡大された能力に酔ってたところ、あったかもしれないって。
そういう風に反省してるのかね。
「ただ、御主人にご挨拶したかっただけなんです。悪気はありませんでした」
なっちゃんも謝った。
俺たちは真摯に謝った。
すると……
「……えっと……あの」
奥から誰か歩いてくる。
それは
綺麗な黒髪長髪の和風美人。
緑色の着物を着ている女性が出て来た。
年齢は20才そこそこ。
……妊婦では無かった。
えっと、谷町将は5人の妻を全員妊娠させているという話だったよな?
あれ、嘘だったのかな?
そんなことを考えながら
いや……出産済みってことかも。
そこから考えて
あ……万一殺されても犠牲者1名で済むように、ってことかな。
そう、そこに思い当たった。
……彼女の表情を見ると、なんとなく俺の予想が当たっている気がする。
明らかに、必死で恐怖に耐えてる感じだ。
誰かが出て行かないといけないから、自分が来た。
死の覚悟を決めている、みたいな。
そんな彼女が、俺たちに言う。
「少し、上がっていかれますか?」
……いいんですか?
「……どうしても、谷町さんにお願いしたいことがあってですね」
リビングに上げて貰って。
テーブルの席を勧めてもらった。
3人並んで、座る。
向こうには、女性1人。
彼女は「
……谷町氏の嫁の1人に間違いないな。
「それは何ですか? 私たちの夫からの仕事への口利きでしょうか?」
最初は怯えていたけど、俺たちが危険では無いと判断したのか。
きりっ、とした仕草に変わっている。
……怯えたまんまだと、夫の恥になるって思ってるんだろうか?
そんなことを思いながら
「いや、仕事では無いんですよ」
俺は言った。
「……お母様の、淀川の魔女さんの占いの順番待ちを早めて欲しくて……」
なるたけ威圧的にならないように、穏やかに言った。
「どうしても、知りたいことがありまして」
天王寺さん。
ふたりでじーっと彼女を見つめる。
すると
「……私たちの口からは、許可も拒否もできませんね、夫に直接言ってください」
きりり、と堂々とした表情で返された。
で、だ。
……なんというかね。彼女、気高いの。
そういう感じがする。
私はあのひとの妻のひとり。自分たちの振る舞いが、全て夫の評価に直結する。
そういうのを、ずっと考えている感じがした。
……このひと、どうみても20才そこそこだよな?
で、谷町将は11才……。
小学生の嫁になって、それに何の疑問も持たず、むしろ誇りに思ってるフシがある。
……どういう人物なんだ? 谷町将……?
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