第32話 キング
淀川の魔女・
年齢11才。
職業・大阪ハンター。
キングの異名を持つ少年で、難しい依頼を何件も片付けて、かなりの資産を築いているらしい。
外見は涼し気な美少年。
その性格は……落ち着いた感じで、いつも冷めている。
行動に知性があり、真面目。
とても年齢通りには見えない少年だそうだ。
だけど……無類の女好き。
その根拠として、次のようなエピソードを聞いた。
「僕の嫁になってくれる女性を探している」
ある日、彼は淀川の売春宿にやってきて、自分の嫁を募集した。
10才のときだ。
売春宿で働いていた娼婦たちを買い上げるから、自分の嫁になってもいい女は名乗り出ろと言ったんだ。
すると、娼婦の方も不特定多数の男に身体を売って生活するより、10才の少年の嫁になった方がどう考えてもマシだから、募集に対して応募が殺到した。
そして、たったひとつの席を巡って、娼婦たちの凄まじいバトル。
それが起きると思われたが
「僕は嫁は複数持つつもりだ。子供が欲しいからね。1人じゃ不安だ」
そんなことを言い出した。
そのせいで……
彼は娼婦たちの健康状態、会話による知性のチェック、性格診断、その他選抜を繰り返し。
最終的に5人選んで、全員妻にした。
……で。
今、彼の家でその妻全員が妊娠しているらしい。
……10才で精通があったということか。
どないやねん。
で、色々悪評も聞いている。
女を妊娠させることが趣味だとか。
処女を破るのが大好きだとか。
……ホントかどうか知らないけどな。
多分、やっかみもあるだろうし。
でもなぁ……
「……噂通りの人物だったら、正攻法でお願いすると何を要求されるか分かんないですよね」
天王寺さんが思案顔でそうコメント。
うん。それは同意見。
……お願いきいてやるから、引き換えに抱かれろとか。
そういうことを言われると……困る。
「でも、その男の子にお願いしないと、占ってもらえないんだよね……?」
なっちゃんがそう、深刻な顔で呟く。
それを見て、俺は思った。
……自己犠牲を考えてるんじゃないだろうね?
ダメだよそれは……
谷町将の聞き込みを開始する前に、彼女
「……ちっぽけな正義感で、順番を早めることをズルって言ってごめんなさい」
って、俺と天王寺さんに謝って来たんだよね。
当たり前のモラルで思わず言ってしまったけど、よく考えると占い師に占ってもらえないと困るのは俺と天王寺さんだけで、自分は関係ないのに、と。
そこに思い当たってしまったみたいで。
本当にすまなさそうな顔をしていた。
気にしなくていいのにさ。
もちろん、俺も天王寺さんも、彼女のその謝罪を受け入れた。
別に欲しい謝罪ではなかったんだけどね。
……でも、彼女の方はそんな負い目があるから、自分が苦役を引き受けるって言い出しかねないよな。
そんな気がしたんだ。
「まあ、とりあえず。直接本人に会ってみよう。口利きの件は伏せて、新人大阪ハンターが、ベテランに挨拶をしたい、みたいな体で」
なっちゃんに行き過ぎた自己犠牲をさせないために。
俺は少し強引な感じで、今後の行動についての提案をした。
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